あらまし
リフレッシュのためにロアコントロールアームブッシュを交換します.
先週ショックアブソーバーを交換していて,概ね致命的なブッシュ類も交換済みとなるので,この作業が終わったらアライメント調整に出します.
車種は MINI R52コンバーチブル クーパーS(6MT).製造2004/12,国内初度登録2005/2です.
大まかな作業手順
大まかな作業手順は次の通り
- ウマかけジャッキアップする
- フロントホイールを取り外す
- 助手席側HIDレベライザセンサを切り離す
- ロアコントロールアームのアウトボールジョイントをナックルから切り離す
- ロアコントロールアームのインナーボールジョイントをサブフレームから切り離す
- ロアコントロールアームを取り外す
- 古いロアコントロールアームブッシュ(リア)を抜き取る
- 新しいブッシュを打ち込む
- 逆順で元に戻す
何事もおきなければ2時間あれば十分です.何事もおきないわけないんですが.なんというか結構準備しておいたのに,工具総力戦(というか足りなくなってホームセンターに二度駆け込む)になりました.
6番Wishboneが一般にロアコントロールアームと呼ばれている部品で,7番に差し込まれている8番が今回の交換対象になるロアコントロールアームブッシュです.
作業
ウマかけジャッキアップ
説明省略.うちではクイックジャッキで上げています.準備するだけで汗だくよ….
フロント二輪のウマかけでも大丈夫だと思いますが,結構ガタガタ車体を揺らすとおもうのっで,しっかり安全確保を.
フロントホイールを取り外す
外してください
助手席側HIDレベライザセンサを切り離す
ロアコントロールアーム(助手席側)についているHIDレベライザセンサを切り離します.
ボルト1本でとまっていて10mmのレンチで外します.かなりさび付いているのでラストリムーバーにつけるか,M6X16なので亜鉛メッキタイプのボルト(ドブメッキでよいでしょう)を別途ご手配ください.
ロアコントロールアームのアウトボールジョイントをナックルから切り離す
こちらも慣れていればどうということはありません.18mmでUナットを外し,ロアコントロールアームを大型の鉄ハンマーでガンガンたたけば外れます.どうにもとれない場合はその両脇にある13mm頭のボルト2本を外してもよいです.ちなみに,経験上ボールジョイントが社外品だと錆びて固着しがち….うちのはハンマー如きではとれず,ちょっと大きめのタイロッドエンドプーラーで外すこともあります.
ロアコントロールアームのインナーボールジョイントをサブフレームから切り離す
鬼門インナーボールジョイント.前回外した時も泣きに泣いた思い出….フォークセパレータでも普通のギアプーラーでもそう易々と外れないです.
hie.hatenablog.jp
インナーボールジョイントも交換する場合*1は破壊覚悟でもよいですが,再利用する場合はちゃんとした工具が必要です.
ちゃんとした工具は巨大なタイロッドエンドプーラです.ディーラ用はさすがに入手はむずかしいのですが,国内でも似たものは手に入ります.
ある程度ちゃんとした製品を買うべきなのですが,僕が使ったのは次.STRAIGHTのでさえ高いよ買えないよ.
ぁゃιぃ中華製ですが,これでいけます.(社外品なこともあって)錆による固着がすごく,このプーラですら危ない感じがしました.かなりぎゅうぎゅうに締め込んで,ハンマーでインナーボールジョイントのブーツを破らない程度にハンマーで殴ったりなんだったりいろいろやりつつ….ふぅやれやれと一息ついて目を離していたら「バコォオオオオン!」とか音がして振り向いたら外れてましたw
プーラサイズは全長165mm程度あって顎がセパレート(一体になっておらず幅を調節できる)タイプならたぶん何でも大丈夫.爪幅は24mmです.ぼくが買ったプーラは締め込みのボルトは24mだったので,24mmのギアレンチも新たに準備しておきました.また,こういったサイズフリーのプーラの場合,口を開いた状態でスタートしないといけません.口がすぼんだ状態でボルトをかけるとそれ以上口が閉まらないのでプーラが折れます.
ところで書き忘れましたが,インナーボールジョイントは21mm頭のUナットです.
ロアコントロールアームを取り外す
アウターもインナーもジョイントははずれているので,あとは引っ張るだけでロアコントロールアームは抜けます.ただし純正のブッシュの場合はなかなか抜けてきません.バールのようなもので押し出すか,もうねじってゴム部分ねじり切っちゃいましょう.結論を言えば,ねじりきった方が後腐れがなくて楽です.ねじりきり推奨.ぼくは片方ねじりきらずに面倒なことになりました.ねじ切ったあとは,残骸を抜けばよいです.ぼくは4インチサイズのギアプーラで抜きました.
古いロアコントロールアームブッシュ(リア)を抜き取る
正直かなり準備をして挑んだつもりでしたが,苦戦しました.
作戦
調べた限りでは,ロアコントロールアームブッシュを抜く方法は大きく次です:
- (サブフレームを下ろして)ブラケット自体を取り外し大正義油圧プレスで抜く
- (車載状態で)レシプロソー(セーバーソー)でブッシュ自体を切り刻んで取り除く
- (車載状態で)専用のスリーブを使ってブッシュを引き抜く
1番は論外です.油圧プレスもなければそもそもサブフレームを下ろしていない.
2番は切り裂く時に不器用さんはブラケット自体を切ってしまうことがある.
となると3番です.3番はブラケットと同じ内径の鉄パイプ(スリーブ)をあてがい,その鉄パイプを支点にしてプーラーを使ってブッシュを引っ張り出すというもの.
うん,傷つかないし,3だね!!!
準備したもの
パーツリストを見る限り,ブッシュの外径(ブラケットの内径)は Hydrobearing D=66MM なので,φ66.0mmと思われます.ちょうどよい頑丈なスリーブがほしい….
目をつけたのはこれ.
jp.misumi-ec.com
完璧です.加工費用と送料を加えてせいぜい2300円です.
届いたら多少バリもあるので側面と内側を中心に紙やすり(320番をつかった)で均しておきます.
あとはブッシュを引っ張り出す部分です.モノタロウで次のようなものを買いました:
www.monotaro.com
寸切の全ねじ.コントロールアームの差し込み穴に入る最大値かつ入手性を考慮しM16.これステンレスSUS302っぽいんですが,できればS45Cとかもっと強度のあるねじが望ましかった.作業中かなりひやひやしました.(SCM435=クロムモリブデン鋼とかならかなり安心)
www.monotaro.com
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あとは,寸切ねじにあわせてナットやワッシャを.舐めたりかじったりしたら終了なので,傷んできたら交換できるように10個くらいはそれぞれ買っておきます.ここには書きませんがスレッドコンパウンドもかじり防止で準備しておきます.
www.monotaro.com
ブッシュを引き抜くのはこれ.66mm内径のスリーブにぴったりです.一枚だと曲がるので2,3枚買っておきましょう!
www.monotaro.com
これはスリーブに引っかける側.かなり厚手なので1枚で大丈夫ですが,ブッシュの後端にうまく特寸丸ワッシャーがひっかからないときは前も後ろも角座金で引いたりもするので2枚あったほうがよいでしょう.
作業
まあ計画通りに行くわけもなくという予告をしつつ….
まずは右側から.
専用工具(笑)のスリーブをフロント側にセットし,ねじ部にスレッドコンパウンド,ブッシュやスリーブにはラスペネ的な潤滑剤を振りまきます.その上で全ねじをフロント側から差し込み,特寸丸ワッシャーをリア側に取り付けます.フロント側には角座金をかけワッシャをしつつナットを絞り上げていきます.M16用のナットなので頭は24mmなのですが,ギアレンチでがんばって絞ります.インナーボールジョイントのプーラにも使った24mのギアレンチを使います.スパナとかではやる気もおきません.死ぬほど固いです.寝そべった状態で全力でレンチを回します.
ギアレンチを全力で回してもピクリともしません.ようやっと動いたかとおもったら,リア側の特寸ワッシャーがずれていたり.何度も付け外しをようやくフルパワーで絞ったときに「バキ」との音ともに動き出す.リアの飛び出し部分が専用工具(笑)のスリーブに入るときちゃんと特寸丸ワッシャーが入り込んだことを確認したら,もう大丈夫.あとはずるずるはいっていきます.ある程度引き出してくるとリア側の回り止めのメガネレンチがかからなくなるのでナットを一つ追加してメガネをかけ直します.
スリーブは66.6mmと0,6mm内径が少し太いため,はまり込んだ古いブッシュもマイナスドライバーでコンコンやれば出てきます.
ここまでは順調.
問題は左.地獄を見たね.
結論からいうと,右運転席側と同じ方法では外れませんでした.全ねじを切り詰めてインパクトレンチがかかるようにしたり,足回り用の大型レンチで回したりしましたが,締め込むたびに「バキ…バキ…」とヤバイ音が出始めたのでやめました.ねじを囓ったら詰みです.
困りました.とりあえずホームセンター(ビバホ○ム)に駆け込んでバーナーを買い込みます(24mmのインパクトソケットもないから買った).だめですびくともしません.バーナーの熱でスリーブ内の潤滑油が煙を出し始めたのでこれもあきらめました.
仕方がない,切るか.ということで再び閉店間際のビ○ホームに駆け込んでレシプロソーを探します.高いのはイヤダァなので,安いやつを探します.
リョービのASK-1010を見つけました.一万円!これに鉄鋼用の150mmのノコを買い込んで,夜の住宅街でブインブイン切り裂きます.ブッシュはロアコントロールアームを受ける部分は金属的なものですが,そこと外形をオイルで満たしたゴムでつないでいます.このゴムを切るのがしぬほどめんどい.というわけで冒頭書いたとおり,ロアコントロールアームを取り外すときわざと引きちぎるように取り外しておくべきなのです.想像ですが,助手席側が簡単に抜けたのはゴムを引きちぎらずにロアコントロールアームが抜けてしまい,ブッシュの内部強度があり抜けなかったのでは??とも思っています.
写真は内部のゴムをようやく切り飛ばし(切れ込みにバイスプライヤーを突っ込んでゴム部分を引きちぎった),外周の鉄部分まで来た状態.一部プライヤーでめくってます.
最後のリングだけ残りました.これ以上レシプロソーで切れば(もちろん外れるのですが)ブラケットに間違いなく傷が入ります.ここまでくれば強度も落ちているだろうし,スリーブで抜けるだろうとスリーブで抜く方法に変更します.
本当に難産でした.
新しいブッシュを打ち込む
打ち込むのはパワーフレックスのPFF5-101です.こいつは打ち込み治具は抜き取りのときに使ったねじ・座金部を流用します.スリーブは使いません.純正のブッシュを打ち込む場合は,内径は同じで,厚さ(…というより長さか?)が1cmくらいのスリーブが必要になります.
打ち込み方法は基本的に次の先駆者に準じます.
minkara.carview.co.jp
ちなみに,この方はレシプロソーで切断しています.RJK-120ですね.ASK-1010よりもお高いパワフルなやつです.
同様に250mmのタイラップで縛り変形を押さえてリップに付属のシリコングリスを塗り込んで差し込んでいきます.
なんというか難しい.感覚的にいうならば,ギアレンチで絞るとぐにゃっと曲がって反対側のリップが飛び出しそうになるんですが,飛び出しきる前にはみ出し気味のリップをねじを動かして圧力をかけて無理矢理押し込んでいくというか….あるところまで行くとちょっとねじ曲がったままでも入っていきます.半分くらいまで入ったら,タイラップをカットしてあとは突っ込んでいきます.
最後はブッシュを破らないように慎重にハンマーで打ち込んで,リア側にリップが飛び出すのを確認して完了.
ロアコントロールアームの差し込みは上下などの向きはないものの差し込み向きやは指示があります.
グリスを塗ってロアコントロールアームを差し込み,奥まで差し込んだらインナーボールジョイントを接続します.
…がこれが,またうまく入らない.シリコングリスを塗っているのですぐ抜け落ちるのもあるし,ロアコントロールアームに取り付ける紫のウレタンパイプがうまく先に打ち込んでおいたブッシュにリップまで入らないとかいろいろあり.ある程度リップまでいれておいて,そこからロアコントロールアームを差し込むというやり方でうまくはまりインナーボールジョイントがとりつきました.
逆順で元に戻す
あとはもうがんばるだけ.インナーボールジョイントやアウターボールジョイントのナットは緩み止めUナットが使われていて,新品を使うよう指示がありますが,再利用します.こいつらは強度指定・亜鉛耐食処理されている上,細目のUナットときたもんで,国内ではなかなか手に入らない.インナーボールジョイントは80Nmで,アウターは56Nmで締め込むよう指示がありますが,しばらくは走行後緩みがないかチェックをしたほうがよいでしょう.(というかトルクレンチで閉めたのに緩んだことがある)
あーあ疲れた.
www.youtube.com
この動画みたいにとるなんて不可能です.
(2022/06/11 追記)
あれあれ,↑の動画が配信停止になってますね.何があったのだろう.
特寸ワッシャーに寸切りボルトだけ差し込んで,ガイドもなにもなしにサブフレームあたりにボルトをひっかけ,てこの原理だけで引き抜くとかいう超荒技動画で,作業後の感想としては「そんなんで抜けるわけねーわ.社外の寸法デタラメのブッシュが入ってたんだろ!」って感じなのです.
*1:インナーボールジョイントは外れてもドライブシャフトが邪魔してそのままでは抜けません.セオリーとしては,サブフレームを下ろすか,ドライブシャフトを抜くか無理矢理押し曲げて抜くか,です.