ヤツのいない職場

同僚が他界して最初の出勤だった.
ヤツとは建物は同じだが,働いているフロアは違う.いつも通りの顔ぶれでいつも通り仕事をする.でも,みんな口数は少なかった.
帰宅する前(つい先ほど),ヤツのデスクに行ってきた.片付けられてしまう前に見ておきたかったから.デスクはそのままだったけれど,花が供えられていた.
強い花の匂いで,もうここにあいつはいない,と思い知らされた.
そこの室長とも今後について話したが,事務的なことや供養についてよりも,室長の顔色が気になった.どす黒く,疲れ切った顔.死んじゃうようなタマじゃあないのはよく知っているけれど,無理はしないでほしい.
今日はヤツと親しかった多くの人たちと話をした.もちろん,胸が詰まって口数は少ない.多くの人が,自分を責めて後悔していた.ぼくもそうだ.「本当に最後っ屁だよなぁ…」とみんな寂しそうに笑う.