(早期)ホジキンリンパ腫でダカルバジンは重要

先般,虎の先生から「ABVD療法からダカルバジンを減らすABVd療法は,標準治療のABVDより劣る」というお話を聞きました.
たぶん,そのソースと思われる情報があったのでペタ.
早期ホジキンリンパ腫の治療にABVD療法のダカルバジンは重要【EHA2010】:日経メディカル

ABVD療法

ABVD療法は,下記の抗がん剤を併用した抗がん剤治療法です.

抗がん剤 商品名 別名
Adriamycin (アドリアマイシン) アドリアシン ドキソルビシン
Bleomycin (ブレオマイシン) ブレオ
Vinblastine (ビンブラスチン) エクザール ビンカレウコブラスチン
Dacarbazine (ダカルバジン) ダカルバジン

記事にある研究の主張

ABVD療法から,重要性がよく分かっていない抗がん剤を外してみて,比較実験しました,というもの.
副作用で患者が苦しむダカルバジンを本当に外しても大丈夫なのかを確認した,ということですね.
結論からいうと,ダカルバジンは外すべきではない,とのこと.

実験群

実験群を下記のように分けて,比較実験をしています.(群の名称は,元記事ではA〜Dで書かれていますが,ABVD療法の語源と紛らわしいので,α〜δに置き換えました.)

法名(暫定) アドリアマイシン ブレオマイシン ビンブラスチン ダカルバジン 放射線治療(領域照射)
α ABVD 30Gy
β ABV 30Gy
γ AVD 30Gy
δ AV 30Gy

詳細は記事や論文を参照してもらうとして,β群とδ群の予後が悪く,特にδ群はかなり危険だったようで,早期に実験を打ち切っています.この時点でも,ダカルバジンは重要といえるようです.

α群とβ群の比較

α群(ABVD療法; 標準治療)とβ群(ダカルバジン抜き)の完全寛解率は,α群=97.5%,β群=95.8%で,やや標準療法のα群がよいようです.
しかし,悪化や再発を表す比率では,α群=4.0%,β群=13.1%と,ダカルバジン抜きのβ群の方がかなり悪くなっています.つまり,効きにくくなっています.死亡率もα群=2.5%,β群=4.2%です.
4年生存率は有意な差はないようですが,4年治療成功期間(4y-FFTF *1 )はα群=93.5%, β群=84.5%と,ダカルバジン抜きのβ群では,再発しやすようです.4年生存率があまり変わらないのは,そもそもホジキンリンパ腫で短期間にそう簡単に死んだりはしないからでしょう.

α群とδ群の比較

α群(ABVD療法; 標準治療)とδ群(ブレオマイシンとダカルバジン抜き)の完全寛解率は,α群=97.0%,δ群=91.0%と,やはりα群がよいようです.
悪化・再発を表す率ではα群=4.0%,δ群=18.6%とかなり悪化しています.死亡率はそれぞれ3.0%,1.9%だそうです.(ただ,この死亡率が何を意味するかは書かれていません….後述の原著をあたりましたが,この記載はありませんでした.再発した場合の死亡率??)
4年生存率は同様に有意差なしですが,4年治療成功期間はα群=92.3%,δ群=75.3%と,ブレオマイシンとダカルバジンを抜いたδ群が大幅に悪化しています.

結論

ダカルバジンは必須.ブレオマイシンもちゃんと入れて!という結果のようです.
ところで,なんで,α群とγ群の比較が記事にないんだろう.論文にはちゃんとあるんだろうから,探してみようかな〜.

???

欧州血液学会のWebページで summary がオンライン公開されてるようだ.
たぶん

DACARBAZINE IS AN ESSENTIAL COMPONENT OF ABVD IN THE
TREATMENT OF EARLY FAVOURABLE HODGKIN LYMPHOMA: RESULTS
OF THE SECOND INTERIM ANALYSIS OF THE GHSG HD13 TRIAL
P Borchmann,1 V Diehl,1 H Goergen,1 A Lohri,2 J Zijlstra,3 M Topp,4 M
Fuchs,1 H Eich,1 A Engert1

http://online.haematologica.org/EHA15/browserecord.php?-action=browse&-recid=7218

これなんだけど,なんか,著者がちがうような?? (Abstract detail)
放射線治療の話も summary には特にかかれてませんが,論文にはあるのかな??よくわからんです.

*1:完全寛解から治療なしで4年間再発なし.