情報系理系学生の就職活動

今年は昨年にもまして就職戦線が厳しく,理系学生でありながら十数社もすでに受験済みの方もいらっしゃるそうです.私が就職活動をしたのは2006年3月頃でしたが,数社受ければいずれかに入社できるという様相だったと記憶しています.文系の方ですといつの時代も数十社回るのは当たり前との話も伺いますが,私は理系学生でしたのでその辺の話は存じません.今日は寝付けないこともありますので,情報通信産業における理系学生の就職活動の流れでもご紹介しましょう.ここではちょっと大きめの企業を受けることを想定しています.

面接スペシャルは id:Hie:20120323#1332514089 にいい加減にまとめました.

就職活動の取りかかり

情報系に分類される企業へ入社を希望される方は,12月ごろから就職活動の準備をすることが多いように感じます.準備というと大げさですが,下記のことだけをやっていれば一安心と言えましょう.

  • 仕事の方向性の想定.
  • リクナビなどへの登録.
  • SPIやテストセンターなどの筆記試験の問題集の購入.

仕事の方向性とは SE がいいのか SI がいいのか技術営業がいいのか研究職がいいのか,などです.もちろんこの時点で決定する必要はありませんし,これらの併願であっても問題はありません.しかし,何をやりたいのかわからないということはエントリーシートの記入や面接時などでまごつきますので,ある程度希望職種をはっきりさせておく必要があります.私の場合,SI か 研究職で,どちらかというと研究職志望でした.
リクナビなどの就活サイトの登録は必須です.よく利用するホットメール以外のメールアドレスを登録します*1.ただし,半永久的に就活情報を送付されることもありますので,就職した頃には捨てられるメールアドレスなどが望ましいと言えます.大学メールアドレスなどがうってつけです.私はプライベートで利用しているメールアドレスで登録してしまったため,未だに就活案内の DM が届いており大変困っております.解除してもまだメールが届くため,メールサーバ側で拒否することにしたくらいです.
情報系の就活の場合,筆記試験は SPI かテストセンターが基本となります.その他その企業が用意している特殊な試験もありますが,レアケースですので,この時点で無理に勉強する必要はありません.ちなみに,私が SPI とテストセンター以外の試験を受けたことは2度しかなく,それは英語の試験と内田クレペリン検査だけです.なおテストセンターはある程度大規模な企業しか採用しておりませんので,テストセンターを捨てるという選択肢もアリだと思います.

プレエントリー

プレエントリーとはリクナビなどの就活サイトから,興味のある企業を選択した状態です.プレエントリーは1〜2月ごろから開始します.まだ本エントリーではありませんが,当該企業の説明会情報などが分かるようになりますので,ちょっとでも興味を持てばプレエントリーしてよいでしょう.簡単に通りそうな会社から難しそうな会社までよりどりみどりですので,かまわず登録します.

説明会への参加

プレエントリーすると説明会に参加できるようになります.リクナビなどを使って興味のある会社への説明会参加登録をします.今年のように不景気時には,説明会登録が開設され5分で満員になるなどという悲劇もありますが,ここはがんばりましょう. 説明会への参加はその企業へのアピールともなりうるので是非とも参加したいところですが,大企業の場合,そんなこと気にしておりません.説明会で得られる学生の情報などたかがしておりますし,有象無象の学生どもの情報をたった1,2時間の説明会の時間でより分けることなどできないからです.とはいえ,後々面接などで「うちの説明会どうだった?」などと聞かれて答えに窮することもあり得ますので,余裕があれば参加してください*2
説明会ではその会社の方針や強みなどをアピールしてきますので,重要なキーワードをメモしておきましょう.よく分からないけれど大切そうな言葉は後でググっておくことをおすすめします.また,説明会での質問時間では積極的に質問すべきと言われますが,私はそうは思いません.もちろん受験者が少人数ならばこれらの行為が効いてくることもありえますので,一概には申し上げられませんが,正直「オンシャ,オンシャ」などとよく分からない接頭辞のついた低俗な質問をしたところで人事部面々はそんなこと覚えてはおりません.私は無理に質問する必要はないと考えておりますので,興味があれば失礼にならない程度に質問しましょう,とだけ申し上げておきます.
私も企業サイドの人間として説明会に参加し,「御社のアピールポイントを教えてください」だとか「最近○○に負けっぱなしですがどうするんですか?」などと生意気な質問をする学生をちぎっては投げちぎっては投げと応戦いたしますが,もちろん,私も人事部も苦笑するだけであり,その人がどこどこ大学だれであるなどと調査することはありません.そんな暇などどこにもないのです.
普通に参加し,話を聞き,興味があれば失礼の無い程度に質問する,ということだけやっていればよろしい.

本エントリー

プレエントリー後,本エントリーを行います.リクナビから登録できる場合もあるし,企業のWebサイトの採用ページから登録する場合もあります.まずは企業の採用ページを確認しておきましょう.
本エントリーの際か本エントリー後1,2週間以内にエントリーシートを書かされることが多いようです.エントリーシートとは,その企業をなぜ受けたいのかといった志望動機・志望理由の他,簡単な小論文を書かされることもあります.時間はたっぷりありますので,記入内容を大学の先生や親などにチェックしてもらいましょう.大学の先輩に見てもらうというのも手ですが,その先輩の文章能力もいささか怪しいので,その場合は複数人に確認してもらうべきです.もっとも,査読付き論文など*3をバシバシ通すような立派な先輩であれば問題ありません.
エントリーシートの他に履歴書の提出を求められることもあります.ここでは履歴書についてもふれておきましょう.
履歴書はその名の通り受験者の履歴をまとめたものです.とはいえ新卒学生に履歴などありませんので,その通り書いておけばよいです.趣味・特技など迷う箇所もあるかと思いますが,「ストレスの解消法を知っているか」ということでもありますので,映画だとか山歩きだとかでかまいません.しかし,アニメやマンガなどは低俗と思われることもありますし,人間失格野郎との相関もありますので,書かない方が無難です.ストレス解消法を知っている,協調性がある,ということをアピールできていればなんでもよろしい.ちなみに私は酒と書きましたが,たいてい面接で笑い話となっております.履歴書に貼り付ける写真などは何万円もかけて調達するものではありませんが,やはりスピード写真は問題かと思います.人事部は別にあなたのキモ顔など見たくはないので何でもよいのですが,一応礼儀という意味も込めてスピード写真だけは避けたいところです.写真屋で10枚2〜3000円というところでしょうか.
エントリーシートと履歴書では志望動機などの文章を書く必要があります.ポイントは,自分のことを書く,実体験に基づく,でしょうか.奇をてらったことを書く必要はないのですが,実体験やあなたの人となりが浮き上がらない一般論としての志望動機は,他の受験者と同じく埋没してしまいます.実体験を述べ,希望会社の社訓だとか方向性とマッチするということをアピールすることは重要です.
なお,履歴書はワープロ書きでもOKになってきましたので,悪筆な人は検討してよいかもしれません.Wordのテンプレートや TeX のテンプレートなどもググれば見つかります.古き良き日本を愛する企業には使ってはなりませんが,どうせそんな企業はろくでもない企業ですので,気にせずワープロを使って落ちてしまった方が後腐れがなくてよいでしょう.仮にあなたが希望の企業に落ちたとしても私は責任を取りませんけれども.

筆記試験

本エントリーにおいて,エントリーシートまとは履歴書が認められた場合は会社から呼び出しをうけ,筆記試験となります.また同時に面接も実施されることがあるので注意しましょう.
筆記試験の有名どころは SPI でしょうか.正確に言うと,SPI2 です.
SPI は論理学と言語学と性格テストで構成されており,マークシートによる記入です.試験内容については攻略本などがたくさん販売されておりますのでそちらをご確認ください.SPIノートの会出版のものなどをおすすめいたします. 問題は SPI の性格テストです.もっとも思った通り記入していれば問題などは起きないのですが,次のような問題には注意してください.

  • 私の体からは異臭がする. Yes / No
  • 私は今までに一度も風邪をひいたことがない Yes / No
  • 私は内向的である Yes / No

一つ目は問題外ですが,2つ目はライ・スケール(嘘つき度)と呼ばれるものです.今までに風邪を引いたことがない人など普通はおりませんから,ここで Yes としてしまうと,「こいつは嘘つきなんだな」と思われてしまうということです.一度も〜ない というフレーズには十分に注意し,本当に一度も〜ないかもしれなくても,回答には注意いたします.3つ目は性格を表すものですが,だいたいの場合,内向的だとかけんかっ早い人を企業は必要としません.したがって No 以外の選択肢はございません.もちろん私も企業から求められるようなすばらしい性格をしていたわけではありません.私は「この企業が求める人材(性格)ってこうなんでしょ?」という理想像として回答をしたわけです.こういう想像が苦手な場合は,自分の尊敬する○×先輩ならこう答えるはず,と立派な人をシミュレーションして回答するのもよいでしょう.
SPIの他にテストセンターというものがあります.テストセンターは希望する企業に行って受けるわけではなく,企業がテストをプロメトリックという試験問題作成企業に委託したものです.受験者はプロメトリック社の受験会場へ足を運び,プロメトリックの監視下でパソコンを使って試験を受けることになります.このテストセンターは相当いやらしいもので,ある問題について正答であれば次の問題は難しくなり,逆にある問題について誤答であれば次の問題は簡単になります.つまり,最後の最後まで自分がなんとか解けるか解けないかという問題になってしまいますので,満足感が得られずもやっとしたまま終わることになります.
下記は今現在テストセンターを採用している企業です.(SPIノートの会調べ)

どうやら私が働く会社もまだまだテストセンターを利用するようですね.

面接

今までの関門を順調にクリアしてきた学生には面接が待っております.
私も学生の時はそうだったのですが,面接を実施する人事部員はなかなかに怖く見えるものです.しかし,人事部員とて所詮は人間でありそれほど立派な人間だらけというわけでもありませんので,自信を持って臨んでほしいものです.基本的には提出済みのエントリーシートやら履歴書やらを基に質問をされますので,事前に何を書いたかだとかそれに則った自己アピール内容は考えておきましょう.
グループ面接とやらもあるようなのですが,私はグループ面接をやったことはありません.
たまに面接室に入るときは三回ノックだとか,なんだとかいろいろと言う輩もおりますが,正直人事はそんなところ見ておりません.快活さや明朗さと必死さなどは見ておりますので,ここらへんをがんばりましょう.頭が真っ白になるタイプの人は脳内練習を欠かさず行っておくべきです.
面接は1〜3回程度あります.最後は重役面接ですが,情報系の場合はここまでくればほとんど通っていると見て良いように感じます.
大手の企業の場合は,3月後半から4月に実施されることがたいていです.

採用通知

採用通知はたいていメールか電話です.おめでとうございます.素直に喜び,まだ他に受けたい企業が残っている場合は即答できない旨を誠意を持って述べましょう.

推薦

受けたい企業にすでにOBやOGがいる場合,大学推薦を受けられることがあります.企業によっても異なりますが,一般試験と併願できる場合や,どちらか一方しか受けられない場合,一般から推薦へ乗り換えられる場合などありますので,よく確認します.もっとも,普通は一般で落ちた後の推薦試験にはまず合格しないので,効率をあげるためにも推薦一本に絞った方がよいと思います.

その他

つらつらと私が就職活動していたときを思い出し,最近学生から聞いた話を織り交ぜつつまとめてみました.面接や推薦の話はもっといろいろと書きたいのですが,企業により大きく異なるため,なかなか書きづらくまとめにくいものです.要望があればまとめてみたいとは思います.

*1:ホットメールで登録した場合,人事部はどうかしりませんが私などは不快に感じます.この辺,私もいわゆるオールドタイプなのかもしれませんけど,不快に思う人は少なくないと思っています. ←もうそんな時代ではない.2012年現在

*2:最近では,どの説明会に参加したかを記録している会社もあります.

*3:学会から合格と認めてもらった論文と思っていただいて問題ありません.このような査読付きの会議や論文を通すような人は,人に読ませる文章を熟知しておりますので,安心して校正を依頼できます.