就職活動における面接の話を書いてみよう
この時期になると過去に書いた就活のエントリへのアクセスが増えますね.
わたしもつい最近入社したばかりのつもりでしたが,どうやら新米→中堅にクラスチェンジをし始めたところでして,就活中の学生と会う機会も多くなりました.
採用のやり方は各社・各大学で異なりますので深く言及はしませんが,とある情報通信企業一部上場企業のとある大学の学生向け面接について書いてみます.業界によってかなり見ているところが異なりますので,一例として読んでください.大手メーカー系(本社採用)や大手通信企業(本社)では比較的通用する話だと思いますが,逆に中小やお国系の力が入っている企業(日本銀行など)ではおそらく通用しないでしょう.外資とか間違いなく通じないからね.
このエントリで対象となっている大学(学部)は,帝大,東工大,早慶,電通かそれに準ずる工学系大学(またはその学部)まで.
そうそう,昔書いたエントリ id:Hie:20100313:1268500708 あたりも参考にしてください.2年以上前のエントリですが,現状の採用パターンはこの頃とあまり変わっていません.
面接は基本的に減点方式である
初っぱなからショッキングなことを書きますと,多くの場合,面接では(具体的なポイント制かどうかはともかく)減点方式を採用しています.少なくとも私の周り(同じ会社の同僚)や私はそうしています.
面接員に配布される社内文書で,採用方法として明確に「加点方式」と書かれていなければ,面接員は普通 減点方式を採用します.なぜなら,悪いところの方が目立つからです.「なんだか全体的に悪そうだけど,ここは光ってる!」などと考えて採用する面接員はおりません.もしいたら,その人はさっさと人事・採用から足を洗った方がよい.その方が会社のためです.そういう学生は入社しても,周りから悪い面だけ見られるため,仕事を協調して進めることが困難なケースが多いと感じています.
採用枠に実際の採用数を収める必要があるため,最終的に面接員は「この学生はここが悪かった.この悪さは,他の学生のこの悪さよりも目に余る.だから落とそう.」と,良い点よりも悪い点を重視して落とすことが多い.大手企業は大体こうじゃないかな,と思います.なぜなら冒険をしたくないからです.
「加点方式だから安心してねー」なんて言われても信じないように.忙しい面接員は学生のいいところを探して加点してくれたりはしません.もっともいいところを常にみせてないと減点されるというマジックも潜んでいるので,何も言わなければよいってものでも無いんですけどね….
どういうところで減点されていくのか
どんな学生であれ,満点で面接をクリアすることはできません.なぜなら,面接員も人である以上,学生に対する好みや性格の不一致から気になる箇所(減点箇所)が多少はあるためです.
面接をそつなくこなすためには,この減点箇所を最小限にする必要があります.
最初の第一声で落とすかどうかの7,8割が決まるは(ある意味)本当
採用側も忙しい中学生の対応を強いられており(人事部はそうではないかもしれないけれど,かり出された面接員の多くはそう.),学生と会うときは「忙しいのに…」と思っているケースが大半です.この状態だと,最初の挨拶の段階での学生の動きは大いに目に留まります.ここで下記のような学生は真っ先に落選候補とされてしまいます.
- 元気がない.
- 緊張しすぎている.
- マナーが悪い.
元気がない学生や緊張しすぎている学生は,面接員としても,まず話を聞き出すために学生のケアをするところから始めなくてはなりません.ただでさえ忙しいのに,こんな手のかかる学生は最初から眼中外です.「緊張しちゃっても面接員も落としたい訳じゃないから,がんばって喋ればいいところを見つけてくれるって!」なんてアドバイスもちらほら聞きますが,残念ながら採用候補は他にもいますし,採用しても緊張しちゃって客先にいけないなんて事になっても困るので,普通落とします.勘違いしてもらっては困るのですが,そもそも面接員は枠に収めるために学生をどうやって減らすかを考えています.乱暴に言うと「オレはお前を落としたくてウズウズしているんだぞ!」くらいのノリです.
マナーが悪い学生,というのはちょっと表現が違うかもしれませんが,要するに面接員を立てた礼儀正しい対応をしているか,ということです.べつにドアのノックがトイレノック(2回コンコンとするのはNGとされる)だから問題とかでなく,面接員に不快感を与えうる行為があった時点でアウト.
どういうレベルの学生が応募しているかにもよりますが,通常,ここを乗り越えればグッと採用される確率は相対的に高まるといって良いでしょう.逆にここでダメだと挽回はほぼ不可能です.
ここで,落とすかどうかのボーダーに乗ってしまった人は,その後の会話で盛り返すチャンスもありますが,既に落選側に片足を突っ込んでいます.
勘違いしないでいただきたいのは,「第一声で落とすかどうかの7,8割が決まる」のであって「第一声の段階で2,3割の人は合格への切符を手にしている」わけではないのです.あくまで,減点方式なんです.
KY発言をしたら減点する
採用とは面接員が「一緒に働いてもいいカナ…」と思う学生を見つける作業です.したがって,反社会的なことや場の流れにそぐわない発言・行為をなした場合は減点対象です.
もちろん,「大学に入って1年目から呑み会の幹事ですよー.ハハハ」とか,そういう共感を呼ぶ発言は全然OKなんですが,「負けん気が強くてけんかっ早い」とか,「上の人にももの申せる」のような会社に入ったあとでやらかすとまずいよねーな話題を振ったりすると減点になります.こういうミスは,面接の場が暖まってくるとやりやすくなるので要注意です.
反社会的といえば,ホストのバイトをやっているという学生に出会ったことがありますが,こういうのは,普通落ちます.面接員にもよるけれど,居酒屋ホールくらいなら大丈夫かな?
余談ですが,バイト繋がりでいうと,塾講師なんかは受けがいい.実際のところは「塾講師=生徒を納得させる」なので話術が巧みになっているところがポイントです.塾講師そのものが受けているというよりその経験により得た話術が受けている.
謙虚な学生は減点対象になりやすい
いわゆる正直者かつ学生時代に大なる功績がない学生に多い傾向なのですが,いわゆる謙虚な学生は減点対象です.
会社とは営利組織です.一人一人が社内の雰囲気を壊さず(上のKY発言の項を参照),会社の利益のために元気よく働いてくれることを経営者や上司は望みます.従って,謙虚な学生は「こいつ採用してなんかうちにメリットあんの? こんな謙虚な感じだと,やっている仕事もアピールしない=部署や会社が軽く見られるって状況になりかねないな」となります.正直者なんだなーという好印象は無くはないのですが,それ以上に減点要素が大きい.
なお,正直さは大事ですが,使い処を間違えると減点要素です.日本では,会社の利益のために同僚と協調して働くということが会社員の本業です.その和を乱しかねないほどの「カタブツ(正直者)はいらない」となります.日本らしいといえばそうですが,昔から白川の清き流れに不魚住といいます.小事の悪所に囚われて大事を見失うきらいがあると思われると減点をくらってしまいます.正義感が強くてコンプライアンスはちゃんと守るけど,人をあげつらったりはしないよ,くらいが理想かな.
御社が第一志望ですと言えない学生はまず減点
前項目の続きです.
真面目なカタブツ学生は,「御社が第一志望です!」と言えないケースがあります.よくあるアドバイスでは「御社は第一志望群です!」と言えばいいとありますが,そんなのダメ.減点です.嘘は良くないけれど,面接員もそんなこと織り込み済みなのでココに関しては堂々と嘘をつけばよろしい.君たちのライバルは堂々と第一志望といっているのに,どうしてわざわざ自分から合格率を下げようとするのでしょう.
一緒に働く同僚に融通の利かないものが混じっていることを嫌う人は多いので,こういう場合は「嘘でもいいから第一志望って言えよ…」と心の中ではつぶやいています.
嘘をつくことが良いことかどうかといわれれば,基本的には嘘はつかない方がよいです.面接員は学生よりも10年以上年長で社会経験が豊富です.たいていの嘘は見破ってきます.ですので,織り込み済みの「第一志望です!」くらいは問題なくても,その他の嘘はまず減点対象.ただ,嘘でなければよいんです.例えば「学生時代の誇れる業績はなんですか?」と聞かれたとき,謙虚に普段のことを話すより,「(たった一度しかなかったけど)試験の成績が200人中3位でした!」などと話した方がよいです.嘘はついていないので,自信を持って話せますから面接員も大いに納得します.
また,他社の選考の話はふられない限りしないほうがよいです.推薦応募ならば,他社選考が順調なら喋っても問題としないケースもあります.その場合は,「腕試しで…いや第一志望は明らかに御社です」とフォローしておけばよいでしょう.他社で落ちたとかは口が裂けても言わないこと.わざわざ自分の弱点をバラすような空気読めない学生は減点です.
逆に,「御社しか受けてません!」は仮に本当でも猜疑心をかき立てられるから無難に答えましょう.
いずれにしろ,都合の悪いことは言わないのが吉.
学部生と院生は見られているところが違う
学部生と院生(修士・博士)は見られているところが全く異なります.下記を参考にしてください.
- 学部生(または文系): コミュニケーションスキル(論理思考含む)・やる気・興味嗜好を見られる.学部生は大学院で研究などをしていないため,技術の深いところは聞かれません.
- 修士(博士課程前期): 上記に加えて,技術についてどのような研究アプローチを取っているか等,技術に対する問題解決能力や技術志向を確認されます.
- 博士(博士課程後期): 上記に加えて,いかに研究業績を上げていて,これが会社の役に立つかどうかを見られます.ここまで来ると学生側にも相当なクセがついているので,即戦力としての能力を期待されます.
修士・博士にいくにつれハードルが上がるように見えますが,そうとも限りません.なぜなら技術に対する会話が出来るようになっているし,論理力も高まっていますので,面接員を納得させやすいのです.
面接の終わった学生に対する評定
面接員は面接した学生を予定の採用枠に収める必要があります.
これはすごく簡単です.減点の少なかった学生を上位に入れていきます.なお,その前に,第一声で印象の悪かった学生はリストから消されています.なむ.
この評定は荒れることがあります.
優秀な学生が多すぎて枠が足りない
企業から見ればうれしい限りですが,採用側(特に大学OBが出身大学学生を採用しているケース)は大いに悩みます.せっかくダイヤの原石がいくつもあるのに,どれかを諦めなければならないなんて….こういう状況で,採用側はいくつかのプランを検討することになりますが,真っ先にやろうとするのは,「枠をなんとか増やす努力をする」です.
これは面接員からすると諸刃の剣.人事部の面々をはじめ多くの人に迷惑をかけてしまうからです.でも,そこまでしてでもこいつらを採りたい…!というときはまずは掛け合ってみます.うまくいくと,優秀な学生さんを一気に獲得できてみんなハッピーになれます.ただ,来年はそういうことがないようにとクギを刺されますので,いつも使える手ではありません.
ボーダーの学生が複数人いて枠が足りない
大体下記のいずれかとなります.
- えいやで落とす学生を決める.
- 全員落とす.
優秀な学生との違いは,ボーダーの学生=まあとってもいいしとらなくてもいい,だからこういう裁定になります.
減点減点と書いたが加点もある
減点は,「あ,まずいこといったね.こりゃ減点っと.」というノリでなされますが,加点はジワジワきます.「第一声のパンチがなかったからあんまり期待していなかったけど,なかなかいいんじゃないか…?」という感じ.ただ,第一声でいいポイントを稼いで,そのまま最後まで減点の少なかった人にはかないません.
このジワジワ加点は自分の世界を持っていて,それに誇りを持って語れる学生さんに多い気がします.
番外編: 事前の訪問や挨拶メールに意味はあるか
あります.採用枠に空きがあるときやライバル学生がダメダメな場合に限りますが….真に優秀な学生がそろっているときは,事前の挨拶なんぞは忘れ去られますが,応募した学生にムラがあるときなどにはそれなりの影響を与える可能性があります.もちろん,そういうのを気にする面接員とそうでない面接員がいるんですけどね.
ちなみに,アポ取りメールも含めて,メールの文章は気を遣って書きましょう.私は「迅速な対応をしてください」というメールを学生から受け取ったことがあります.たぶん「早い返事をまってます」くらいのノリなんでしょうが,ダメダメすぎです.日本語の間違いなども見る人は見ます.私は基本的にはそこまで見ませんが,同程度の学生がいて,片方が日本語カンペキで片方がダメだったらカンペキな方をとります.
まとめ
もーなんていうか,採用って大変なのよ?
正直ちょーいそがしいの.そんななか面接してるのに,「キンチョーして頭真っ白です」とか不採用あたりまえです.
そういうひとは面接の練習しまくって,リアルでも面接うけまくって話し方を覚えてください.
おすすめのやり方は,一本自分のストーリーの柱をつくること.面接うまくない学生さんは一本立ったストーリーがないから,自信なさげに喋り,元気がないだとか頭真っ白で喋れないだとか,そういう状況になるんです.あとは企業毎にストーリーの枝のはやし方とか肉付けの仕方をアレンジすればよいです.これだけで,別の表現で同じ内容の質問されても矛盾した発言はしなくなりますし,説得力もつくってもんです.
もしも,まだ就活は先なのにこのエントリを読んでくださっている奇特な学生さんがおられましたら,おすすめするのは勉学だけでなく,飲み会幹事などのリーダーの経験を積むということです.こういうのは他人の心理を最低限読む必要がありますし,日本の会社員には受け入れやすい文化です.「学生の頃がんばったことですか?? いやー,飲み会の幹事っしょー,たのしいっすよーあれー」みたいな学生でも,他のところがちゃんとしているヤツなら加点対象です(飲み会しかなかったらアウトだけど).学生時代は楽しいことを仲間と一生懸命にやってリーダーシップを磨きましょう.ただし,それが社会的(会社人的?)に認められるものであることが条件ね.
さて,今回は,一部企業向け(しかも理系)に限定してお話しましたが,この全てが正しいとは思っていません.が,真実も多分に含まれていると信じています.
おまけ
面接側のデータ
面接とは関係ないけれど,面接員が参考にしているデータとかに関連して.
- SPI2やテストセンターの結果は意外に正確.若干のバラツキはあるものの,大きく本人のスペックとずれて出たりはしない.
- 内田クレペリン検査は意味なし.ただ,その存在を学生は事前にしっておくべきで,イザ試験のときにはしれっと「初めてやりました」と答える.
身だしなみ
男の子は床屋やスーツ売り場にいって就活!と叫べば店員がそれっぽいのにしてくれるので割愛.
女の子(理系)は,化粧の仕方くらいは覚えてください.白粉付けすぎて平安時代の人みたいになっている子を数年前に見たことがあります.
たぶん,そういうのと縁のない生活をされていたんでしょうけれど,そういう子は恥ずかしくても美容院や化粧品売り場で教えてもらいましょう.恥ずかしかったらお友達とか親とかに教えてもらいな.そういうのが理由で落とされるのは悲しすぎ.