抗がん剤の是非

id:M_Trickster 氏が id:M_Trickster:20141127 で少し言及されていますけれど,がん治療に抗がん剤を使うことの是非はよく議論されているように思います.
曰く,抗がん剤でがんが治った or 縮小延命できた.曰く,抗がん剤は医者が製薬会社と仲良くするために勧めているだけの効果の無いクスリ,云々.後者については,「がん放置療法」とかいう謎治療を提唱している近藤誠とかいう人もいます.よくわからないのですが,抗がん剤はダメらしい.でも悪性リンパ腫にはいいらしい.どっちやねん.
そのほか,食事療法なんてものもありますね.玄米食にすればがんを撃退できるとか信じている人も多いようです.嫁さんががんになったとき,当時の上司からコラーゲンで癌を撃退みたいな冊子を頂きまして,ありがたいような微妙なような困ったかんじになりました.お気持ちは嬉しいんですけど,ねぇ.というかんじ*1

さて,身内にがん患者をもつ身としては,抗がん剤はあくまで治療の仕方の一つで,それ以上でもそれ以下でもない,と思っています.
悪性リンパ腫の多くは抗がん剤がとてもよく効くから治療の第一の選択肢は抗がん剤でしょう.死亡率の高い肺癌であれば小細胞癌のような抗がん剤の効きやすいものなら抗がん剤にすればよいし,肺腺癌のように効きにくいものなら(ステージが低ければ)切除がよい.本当にケースバイケース.
多くの固形癌(非白血病・非悪性リンパ腫)では,ステージが低い内は外科手術による摘出が第一の選択ですが,ステージが上がり転移しまくった状況では切除しようがないため,抗がん剤が第一の選択となりやすいですね.つまり,ステージが上がって死去⇒抗がん剤で死んだように見える,というのが「抗がん剤は効かない説」の論拠だと思われるのですが,たったそれだけのケースで抗がん剤は効かないなどと決めつけないでいただきたい.

嫁さんががんになったとき,いろいろな医学論文を読みましたが,「それぞれの治療がどれくらい効果があるのかを数理的・統計的に評価をする」ことが一般的です.例えば,抗がん剤を与えたグループ・与えなかったグループで病状がどう変化するかを統計処理しているわけです.こういったデータは1,2年で標準治療として医療の現場へ反映されています.実際,うちの嫁さんがされた治療法は2012年にドイツの医療グループの研究結果に基づいたものでした.

こういった事に気づかず,都合の良い言葉に惑わされないようにするとよいですね.
日本の医者の多くは患者に治ってほしいと思っています.抗がん剤を進めるときは実績のある標準治療であるとか,よくよく考えた上で抗がん剤の利用を提案しているのです.
そりゃあ,まあ,抗がん剤を使わないに越したことはないんですけどね….うちの子も再発すればサルベージ療法かブレンツキシマブ・ベドチンとかの新薬利用でしょうし.

他方,アフラックの「がん検診のススメ」という冊子があるのですが,がんや治療の取り組みを客観的かつわかりやすく説明していておすすめです.詳しくはこちらを参考に.http://www.aflac.co.jp/corp/mesena/mesena_gankenshin.html

*1:決して食事療法がダメだといっているわけではないのです.たとえばがん予防という意味では,「熱いものを摂りすぎない」などは基本ですし,健康的な食生活が免疫系を強化し,結果として新たに生まれたがん細胞を早めに免疫細胞の力で駆逐できることがあることは知っています.