Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8(S) と Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8D のニコイチ

まーた買ってしまった….
先般修理した,Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8D の中玉のリアを削ってしまったのと,中玉の内レンズに一枚キズをつけてしまったこともあり,写りはともかくとして,なんとなくスッキリしていませんでした.なので,安いジャンク出物があればニコイチしたいなぁとかおもって,Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8D ジャンクを探していたわけです.
今回仕入れたのは,Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8D ではなく,Sレンズの Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8S です.
構造はほとんど同じなので,今回交換したい中玉も同じ仕様のはずです.

ジャンクで買ってきたAi AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8S

もともとは,ジャンクだけれど,ショーケースに収められた「ホコリが入っているだけ」という触れ込みのレンズだったんですよ.
見せてもらうと,ホコリだけではなく,どうみても曇っているし(織り込み済み),よく見ると後玉にヒビが入っています.
後玉のヒビを指摘すると,急に値下げしてきまして,結局,1,000円で買えてしまいました….いや,これくらいのヒビならもう少し出しても良かったんですけどね….

ニコイチをしましょう

今回買った Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8S から Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8D に移植するのは下記.

  • 前玉群:D のほうは,ジャンク箱で転がされていたためか,前玉フロントにキズがありました
  • 中玉群:D のほうは,もともとカビだらけでやむを得ず中玉群の一番リア側のレンズを研磨しており,多少の歪みが出ていました.また,組上げの時にぶつけちゃって,中玉群の内側レンズに一枚カケをつくってしまいました….

大半のレンズを入れ替えるのに,D レンズのほうをメインにするのは,D レンズの方が電子的な部分で強化されているからです.Dレンズのほうは,レンズ側から撮影距離が本体に電気信号(D信号)としてボディフィードバックされるため,フラッシュ時の調光性能が良くなります.
その他,本レンズの違いは,絞り環のデザイン変更でしょうか.他はほとんど一緒だと思います.

ギャラリー

  • 左:Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8S
  • 右:Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8D
左→右へ,前玉群・中玉群を移植します.



Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8S のほうは,後玉にヒビが見えます.



分解していきます. 前玉・中玉は前玉方向からバラします.
使うのは,吸盤オープナーです.めちゃ固なので,カニ目レンチを持っている人は使った方がいいかも. ぼくはカニ目レンチを持っていないので,前玉を割らないように吸盤オープナーで頑張ります.
回すのは,外環のほう.内環は前玉群の前玉レンズ分解コースです.



前玉がごっそり外れます.一緒に,スペーサーとしての座金が3枚(4枚だったかも?)外れてきますので,慎重に吸盤などで取り外します. 私は吸盤を買い忘れたので,粘着テープで引き上げています(後で清掃必須ですが…).



前玉を外すと,中玉群が見えます. こいつの分解は結構厄介です.少し奥まっている上に,結構固いんですね.中玉と鏡胴のすき間を覗くと,中玉群を収めている台座を回すためのカニ目穴が見えました.しかし,中玉群と鏡胴の間は5mm程度と狭く,細くて足の長いカニ目レンチが必要だと思います.
吸盤オープナーで割らないように頑張ります.



外れました. 中玉群(台座つき)とその座金リングが出てきます.



中玉群は残念なくらい曇っています.しかしキズはありません.



中玉群のレンズは台座に治まっていますが,この台座はフロントもリアもねじを切ったリングで止められています. 困ったことに,このリングはロックタイトで接着されておりますので,ちょっと手では外せません.



中玉群を煮ます. ロックタイトの#350が使ってあるらしいのですが,そうすると接着剤の耐熱温度は150度です.湯煎では無理なのでは…と思いきや,湯煎5分で外れるようになりました.
当たり前ですが,レンズの急激な温度変化は熱膨張・収縮による割れに直結するため,ぬるま湯時点でレンズを入れてから煮沸します.また,冷ますときも,できるだけお湯の中で自然冷却されるのを待ちます.特に冷却は注意が必要です.
ぼくは,沸騰した状態取り出し布巾の上でねじを少し緩めた後,またお湯に戻し,冷却しました.



バラしました. 本当に向きが分からなくなるので,よくメモってください.とくに,リアから2枚目のレンズは向きがわかりにくく,何度か逆方向に組み込んでしまいました. なお,逆方向に組み込むと,テレ端ではなんとなく動作するものの,ワイド端でピントが合わなくなり,最小撮影距離が3mとかになります.



曇っているのは,中玉群リアのレンズ(内側)です. Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8 は S ・ D*1どちらも,中玉の貼り合わせレンズの接着剤(バルサム)の劣化が原因でくもりが出ると聞いています.いわゆるバル切れというやつです.しかし,実は曇ってるのは中玉群リアのレンズの内側のコーティング剥がれであって,バルサムではないのでは??と思っています*2.今までに2つしかバラしていませんが,どちらもくもりは中玉群リアにありました.
というわけで,中玉群リアのレンズの内側をエタノールで磨き上げます.完全にはきれいにならないけど….



なんぼかましになりました.いや,この画像から判別するのは無理ですが….



中玉群をくみ上げます.
だいぶくもりは取れました.



できましたー.
なお,撮っているレンズは,ニコイチの寄せ集めになってしまったレンズです.こっちも前玉・中玉・後玉にヒビ・キズがあるわりに,それなりに写るみたい.



before/after

ニコイチなので,before/after ってのも変ですが….

Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8S
ジャンクで拾ってきた直後に撮影.ひどいものです.


ニコイチ後の,Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8D
だいぶマシになりました.

以下,ニコイチ後の Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8D で撮影したもの.
逆光はやっぱりダメだな.





まとめ

  • Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8S
  • Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8D

の前玉・中玉レンズ群をニコイチして Dレンズに遷しました.一応Sレンズも残りのクズレンズで再構成しました.
結構まともになったとは思いますが,ヤフオクでくもりのあるSレンズに2万円,Dレンズに3万円も値が付くのは結構謎です.
確かに写りはいいんですけどね.くもりが完全にとれないこともあり,もともとが逆光苦手レンズと言うこともあって,常用とはいかなそうです.
f/2.8 を生かしたボケの大きい写真を撮るとか,暗所の被写体ブレを抑えるにはよいでしょうが,風景や単純に明るく撮りたいだけなら,VR のついた現代レンズで絞って撮れば良いんじゃないかと.
もちろん,90年前後のレンズとしてはとても良い出来だと思います.

あと,マネして壊してもしらないです.

メモ

NIKKOR にある,図2のうち,フロントから9枚目(中凸群のリア)が曇っているレンズです.これは,貼り合わせレンズではありません.
http://www.nikkor.com/ja/story/0039/img/39_danmen2.jpg

*1: Dレンズは,中期(S/N 4XXXXX 台まで.)

*2:もしこの仮説が正しいなら,剥がれたコーティングは当然フレア防止のためのコーティングでしょうから,こうなったレンズは逆光性能は最悪と言えましょう.