pitte について思ったこと

はじめに

ぼくも普段からお世話になっているみんカラの運営会社であるカービュー(carview)が,自動車整備のC2C型スキルシェアリングサービス「pitte」とやらを開始するらしく,キャンペーンのメールがやって参りました.
これについて想像したことをあれこれと書いてみます.

C2C型スキルシェアリングサービスとはなんぞや

ここ数年,経済誌を賑わせるトピックスワードに「○○シェアリング」というのがありまして,「pitte」もその運用形態の一つです.カーシェアとかライドシェアとかってよく聞きますよね.アレです.

「○○シェアリングサービス」って(?_?)という方に簡単にいうと,ユーザ一人でモノなどを購入して占有して使うのではなく,何名かで共有して使うことで,一人当たりのお支払いを安くしましょう!というもので,特に,誰か他の一般人が持っているものを使わない時間にお安く貸し借りする形態のサービスを「C2C型シェアリングサービス」と言います.C2Cは,Customer to Customer の略で,ユーザとユーザ間でのやりとりが主体となることを表しています.
たとえば,国内にもすでに DeNA 社の運営する,Anyca という C2C型カーシェアリングサービスがあります.これは,お小遣いを稼ぎたい自動車オーナーが,その車に乗ってみたい人に,使わない時間に車を貸し出すのを斡旋(マッチング)するサービス.実は,斡旋サービスを行っている Anyca 自体は車を一台も所有していなくても実現できるサービスで,(斡旋)サービス提供者のフトコロは全く痛まない大変ナイスなサービスで*1,こういったサービスがここ数年経済誌を賑わせているというわけです.

では,スキルシェアリングサービスってなあに(?_?)というと,これはモノの貸し借りではなくて,できることの貸し借り(能力の貸し借り)です.つまり有能な人のヒマな時間を,その人の能力をほしがっている人に時間貸しする,斡旋(マッチング)サービスがスキルシェアリングサービスになります.ユーザ間で能力を貸し借りしあうC2C型サービスになると,斡旋サービス提供者は利用者に提供するスキル(人材)を持っていなくてもサービス実現できるというフトコロの痛まないナイスな商売なのです.

pitte はC2C型スキルシェアリングサービス

pitte について平たくいうと,普通の人よりちょっと車のことがわかってるユーザ(スキル提供者)(の能力)と,車のことがよくわかっていないユーザ(スキル利用者)とをマッチング(斡旋)する仲介サービスです.
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図. pitte のイメージ.アルファロメオなら作業経験のある一般人の方です.

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図. サービスの流れ
作業工賃が発生したら,そのうちの20%と事故が起きたときのため300円の保険料を仲介サービス料として召し上げるという仕組みのようですね.

整備士資格や認証工場でないとやってはいけない作業は,サービスの対象外っぽいですね.

思うこといろいろ

さて,ここからがぼくの思うことです.全部仮説なので外れてるかも.
論旨の結論から申し上げると,「たぶん流行らないと思うけど,もしもこのサービスが流行れば(流行るシナリオがあったとすれば)アフターマーケット業界(修理工場業界)の市場縮小に繋がるのではないか」です.縮小とは言わないまでも悪影響がありそう.

スキル提供者も利用者も大してオトクでない?

サービスのターゲットはスキル提供者とスキル利用者です.
先に,わかりやすいスキル利用者から考えると,これはとにかくちょっとした作業なんだから「安く済ませたい人」です.工場によっても違いますが,修理工場などでの時間工賃(人件費)は1時間あたり6000円とかそんなもんです.スキル利用者からすると,6000円/時を超えるようなサービスなんて絶対に使わないでしょう.トラブったら面倒ですし,同額でもアウト.つまり,どんなに高くとも 6000円/時未満となるようなスキル提供者にしかお願いしないことになります.

一方でスキル提供者は,ヒマなときにお小遣いを稼ぎたい人です.できるだけ多く工賃をもらいたいところですが,スキル利用者は6000円/時未満しか払ってくれません.しかも,そのうち20%+保険金が pitte に搾取されますので,スキル提供者はどんなに頑張っても 4,800円/時未満しか稼げないんです.ひょっとしたら交通費なんかもこの中に入ったり,設備などの持ち出しもあってもっと分が悪いかも.

実際,スキル利用者はもっと安くないとこの手のサービスには手を出さないのでは?とも思うので(エビデンスなし),実際には3000円/時くらいしか払ってくれないのでは?と思います.そうするとスキル提供者はもっと収入が下がり,2000円/時強くらいしか稼げずうまみがないことになります.

そもそもそんなに利用者が増えるか?

自動車整備工場で儲かっているのは車検整備などの認証工場でないと扱えない重要保安部品等のメンテナンスです.これは pitte では認められていないようです.
おおよそ,ガソリンスタンドで頼める程度の電装品の交換や取付が中心になると思います.ひょっとしたら,アルファロメオ(笑)のようなマニアックな車で修理工場が断ってくるケースもあるかもしれませんが,ニッチすぎてマッチングできる気がしません.

スキル提供者は工場の中の人になり業界は縮小する?

ここは妄想全開です.
これまでに書いたとおり,利用者も提供者も現れず,マッチングサービスが成立しないと予測していますが,まかり間違ってサービス利用者が増えてしまうシナリオを想像してみます.
あり得るシナリオとしては,スキル提供者が工場の中の人になるケース.つまり「契約成立して車を持っていったら…普通に整備工場だった!!(ガビソ」ってパターン.これは,時間外で工場の人がスキル(と設備)を提供するかもしれませんし,工場自体がスキル提供者(つまり工場の pitte への出店)です.

こうなった場合,先に示したとおり,利用者は最大でも 6000円/時しか工賃を払ってくれませんし,20%のピンハネがありますし,工場(の中の人)のもうけは減ります.しかし,ライバルの工場が近隣の工場を出し抜くために pitte を利用するようになれば,利用者がそちらに逃げてしまうので,他の工場も pitte 化せざるをえません.

するとあれよあれよという間に,アフターマーケット市場のもうけは pitte に吸い上げられるうえ,利用者が支払ってくれるMAX額も減ってしまうので市場全体も縮退すると考えられます.

pitte をやってみたいか?

いや,大して儲からなそうですし,ぼくは結構です.所詮素人で雑ですし.
みんカラユーザがメインターゲットじゃないと信じてはいるんですが,みんカラのヘビーユーザ(DIYer)が嫌いそうな話ではあるなあと思いますので,もしみんカラユーザがターゲットなのだとしたら,ちょっとうまく行く気はしませんね.工場が入り込んできて業界がしぼむのがせいぜいかと.それまでにサービスが左前になりそうですけどね.フトコロの痛まないサービスなので,細々とは続くかもですけど.

*1:口汚くいうと(いやすでに十分口汚いのですが)他人のふんどしでエンドユーザにサービスを提供して,途中でお金をちょろまかすビジネスです.Uber(ライドシェアリング)とかAirbnb(民泊)とかもそう.