エアーコンプレッサー買った

あらまし

漢の夢の一つであるエアコンプレッサを買ったです.
エアコンプレッサってあれです.整備工場とかでバリバリバリとかインパクトレンチを動かしたりタイヤ空気入れにしたりする工具(エアツール)の圧縮空気作るやつ.
外が暑すぎてほとんど使っていないのですけど,備忘録でちょっとメモしときます.

エアツールに何を求めるのか

エアコンプレッサを使うエアツールにはいろんな種類のものがあります.

  • 空気を入れる
  • レンチを回す
  • サンダーで削る
  • 塗装ガンで塗装する
  • ブロワで掃除する, etc...

とまあ,多様な用途があるわけですね.

調べるまでよくしらんかったのですが,エアコンプレッサにもいろんなタイプがありまして,用途や環境を絞らずに購入するとえらいこっちゃになります.
つまり要件を明確にする必要があります.

ぼくの主な用途

ぼくの環境

  • 自宅駐車場で使用
  • 戸建てとアパートが乱立する住宅街で使用

エアコンプレッサの確認すべき性能

エアコンプレッサ,調べていくとMPaだとか吐出量だとかリッターだとか見るべき指標が多くぼくは結構混乱しました.
ポイントはエアコンプレッサーからツールまでの空気の流れを理解することです.

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雑図解 エアコンプレッサ

エアの流れ

図のとおり,圧縮空気は圧縮機で作られ,いったんタンクに貯蓄されます.つまり加圧されたエアがたまっているのはタンクです.どの程度加圧できるかは圧縮機の性能次第です.たとえば,常用圧力 1MPa とあるコンプレッサはタンクの圧力が 1MPa になるまで加圧を続けます.
そのエアをエアツールに流し込めばツールを使えるのですが,何もせず解放すると 1MPa の圧力でツールにエアが流れると,ツールによっては一発で吹き飛んで壊れる可能性があります.たとえば塗装用のガンは0.2MPa強を前提にしていますので1MPaは強すぎ.その圧力差を調整するのがエアレギュレータ.
必須ではないですが,レギュレータとツールの間にウォータセパレータを挟むことがあります.これは圧縮空気に含まれる水分を除去するためのツールで,塗装なんかには必須です.夏場や梅雨時は思いの外大気中に水分が含まれています.これを加圧しタンク内に入れると,かなりの量の水がたまっています.この水が水分を嫌うツールや塗装面に吐き出されるのを避けるためにウォータセパレータを取り付けることが多い…というかつけた方がよさげ.
最後にエアツールが適切な圧力でエアを受けてツールを回します.

エアの圧力と流量の話

エアツールが取っつきにくい人はエアの圧力と流量(吐出量とか使用量とか)の関係が理解できていないんじゃないかと思います.

圧力(MPa) と 流量(L/min)の違い

当たり前ですが,圧力は空気をどれだけ圧縮しているかを表す指標です.おおよそ大気圧が 0.1MPaなので,1MPa は 10倍の圧力がかかっていることになります.参考までに乗用車のタイヤの適正空気圧は0.23MPa くらい.2気圧ちょっとです.
一方,流量の単位は L/min で,一分間あたり何リットル(容量)の空気が流れたかを表します.ポイントは,流れている空気にかかっている圧力は関係ないというところです.1MPa の圧力で空気が流れていようが 0.1MPa で流れていようが,1分あたり100Lの空気が流れれば 100L/minです.このあたりは電気の電圧と電流の関係に似ています*1

エアツールの使用圧力と空気使用量

ツール側の仕様にも圧力と空気使用量(消費量)の記載があるものです.
上の説明を理解できていればもうおわかりだと思うんですが,使用圧力はその工具を駆動するのに必要な空気圧で,空気使用量はその工具を動かしている間消費し続ける空気の量を表しています.無関係ではないですが,別の概念なのです.
たとえば,あるインパクトレンチの使用圧力が 0.62MPaで,空気使用量が 130L/min だったとします.このツールはレギュレータで0.62MPaを設定し,タンク側が0.62MPa以上の圧力を維持できていて,かつインパクトレンチを動かしている間130L/min をはき出せれば動作するということを言っています.5秒インパクトすればボルトを外せる,というときは5秒かけて,130L/minの5秒分=11L の空気を安定的に 0.62MPa で供給できればよいのです.*2 というわけで,インパクトレンチとかは一瞬ドガガガとやるだけなので,0.62MPa さえ一定秒数維持できればよいので,緩めるだけならDIY用コンプレッサでも結構いける感じなんですよ.連続的に動かすのはタンクサイズ的に厳しいですけどね.

空気使用量と空気吐出量

使用量は上の説明の通り,エアツールでの消費量のことでした.
一方,吐出量は,圧縮機のはき出す空気の量のこと.吐出とあるので勘違いしやすいのですが,タンクに封入していく圧縮機本体の性能を示す指標なのです.
これは,タンクの圧力によって値が変化します.当たり前ですが,タンクが空っぽなときはタンク内も大気圧と同じなのでコンプレッサーから吹き込まれるエアも圧縮されないのでL/minの値が大きく,MAXまで圧縮されてくると,吹き込むエアも圧縮されたものが吹き込まれる(密度の高いエア=容積Lが小さい)ので吐出量が小さく見えます.
ツールでエアを使いすぎて,タンク内のエアが減り圧力制御範囲を下回ると,コンプレッサは自動で再起動しエアのチャージを行います.制御範囲が 1MPa~0.8MPa のコンプレッサの場合,タンク内圧力が 0.8MPa を下回ると再起動して,製品仕様にある吐出量でエアをチャージしていきます.このとき,ずっと工具を使い続けるには,基本的にはその工具の使用圧力で空気使用量より圧縮機の空気吐出量が大きければ,息切れすることなく作業を続けられることになります*3.逆に,吐出量よりも使用量が大きくなると,ツールの使用圧力を維持できなくなり,息切れして塗装に大失敗みたいなことになるわけです.
また,この吐出量に関係するのは電動機の出力です.が,まあ,何馬力あろうがなんだろうが,吐出量が分かっているならそれでOK.

常用圧力について

圧縮機の性能が1MPaの場合,もしタンクが足りないからとサブタンクをつけた場合は,1MPaをサポートするものにしないといけません.破裂はしないと思いますが,ブシュブシュ漏れます.
またレギュレータも1MPaに対応しなくてはいけませんし,レギュレータを通さずにウォータセパレータに突っ込むとこっちはプラスチックなので破裂する可能性があります.
エアコンプレッサのエアって結構つよいので気をつけないといけません.ぼくは20mのホースを取り外すとき,ホース内のエアが抜ける勢いでホースが手からすっぽ抜けて飛んでいったことがあります.

ほかに気になる諸元

あまりに当たり前すぎたり,しょうもないことなので,ここまで書いていなかったのですが,用途により気にするべきポイントを列挙しておきます.

オイル式かオイルレス式か

エアツール調べてる人なら絶対に知っているはず(笑).
塗装や清掃ブロアなど綺麗な空気を使いたい人はオイルレスを選びましょう.メリットは空気にオイルが混ざらないこと,オイルメンテナンスが不要なこと.デメリットは圧縮機の性能が頭打ちになることと,長期的な信頼性がオイル式ほど高くないこと.とはいえ家庭DIYerには問題ないレベルになってます.

エアホース

使用圧力が高い場合はφ8mm以上のホースを選びましょう.あまりに細いと吐出量に影響します.エアインパクトとか使用量が高いツールは影響受けやすいです.
素材ですが,↓が参考になります.でも,基本は使用圧力を守ればOK
www.yamakishi.jp

ジョイントやコネクタ

エアツールのわかりにくいパートです.
基本的に「ワンタッチコネクタ」とか「カプラ」とかかれているものであれば,どのメーカーのものも互換性あります.つまんで引っ張るとジョイントが抜けるやつです.ホースとツールの接続も,ワンタッチとか書かれていればまずつながる(オス・メスくらいはありますよ)と思って問題ないです.
ただし,ワンタッチ式は多少値が張るし太くなるので,ねじ式のジョイントもよく使われています.外さないところはねじ式で,着脱が多いところはワンタッチ式で,というかんじでしょうか.
ねじ側は,G式(=平行ねじ)とかR/Rc式(=テーパねじ,PTともいう)とかいろいろあります.基本的には1/4インチサイズ(2分とかいうw)がほとんど.
suido-158.com
ここいらへんをご参考に.

騒音

うるさいと近所迷惑です!!
あまぞんレビューなどを参考に自宅で使えるかとか妄想してください.え,そんなの気にしなくてもいい環境だ?うらやますぃ….

電源

このエントリを読んでいる人は DIYer だと思うので,AC100V 1択なのだと思いますが,エアコンプレッサはわりと電力食います.12Aとか13Aとか.突入電流(電源を入れた瞬間の消費電流)は15Aを超えることもしばしば.
一般家庭なら分電盤で各部屋系統ごとに20A安全ブレーカがついていると思いますが,その系統をコンプレッサが占有くらいの勢いです.それくらい瞬間的に電力使います.配線が古かったり長すぎたりすると,安全装置が働いてコンプレッサが起動しないこともあります.
ですので,可能なら専用に一本,できれば太めの配線(20Aに耐えられる)で新設してあげたい*4
…と脅すわけではないのですが,延長電源ケーブルを使っていたり,たこ足していたり,築年数長めな家屋から電源をとっている場合は,気をつけてね.

おまえ何買ったの?

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エアコンプレッサ買った

藤原産業 SK11 の SW-231 です.
塗装もやりたいのでオイルレス,一応住宅街なので静音タイプ,でも 1MPa あってたぶん使用圧力は問題ない,一応インパクトも使えて,あとはサブタンクがあればなぁ…という感じの性能.
ツールもいろいろ買ったので,これはまた別の機会に紹介できればと思います.
今のところは満足.
…早速タンク内サビさせたけど;;(エア抜き後にタンクゆさゆさしないと出てこないとは水が出てこないとは知らなかった….)

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全景

*1:電圧V×電流A=電力Wですよね.これは単位時間あたりに生じる電気のエネルギーです.一方,空気圧Pa×流量L/minもやっぱり単位はWです.電気の世界では電圧と電流が相まってエネルギーWで負荷が仕事をするわけですが,エアツールの世界では,空気圧と流量が相まってエネルギーWでツールが仕事をするわけですね.ただし,空気圧のほうが熱の影響で空気が膨張して圧力が上がったりしやすいので,そこらへんは電気とは扱いが違う感じ.

*2:え,5秒で11Lって大杉じゃない?確かに多いですが,これは1気圧(約0.1MPa)に減圧されたときのスペックなので,1MPa のコンプレッサならタンク内では(温度変化しないと仮定すれば)1.7L分とかそんなもんです.このへんの計算はボイルシャルルの法則あたりでぐぐってください.

*3:厳密には誤り.吐出量は0.8MPa~1MPa 時の吐出量でチャージされていくが,工具側は塗装なら0.2MPa での使用量でエアを消費していくので,単純比較はできない.でも,タンク内が0.2MPaまで減ったと仮定して考えると,同じ0.2MPaの比較になるので,0.2MPa時の吐出量と使用量を比較しても問題ないことになる.

*4:安全ブレーカは20Aでも,配線は15A用というのはザラ…というか普通.20A用配線はエアコンとか電子レンジ用の専用系統に使われることが多い.分電盤から新設するなら20Aの安全ブレーカに,VVF2.0線で配線するべし.ぼくは先頃のリフォームで,このためにVVF2.0アース付きで駐車場まで電源を引っ張っておきました.