AE100 カローラ アイドリング不調まとめ

ここ一年間ほど苦しめられたアイドリング不調について記録を残します.

症状

2013年の夏頃から暖機をしている最中にアイドリング回転数が高くなる事に気づきました.違うかもしれませんが,2013年7月13日の猛暑の中大渋滞に見舞われた後起きるようになった気がします.
症状を列挙すると下記の通りです.

  • 基本症状
    • 症状A: アイドリングが高い(1,500rpm 〜 1,800rpm)
    • 症状B: ハンチングする 1,500rpm 〜 2,200rpm)
  • 発生条件
    • 冷間時〜暖機完了までに発生する.
    • 冷間時だからといって必ず発生するわけではない.
    • 冷間時から暖機が完了するにつれて発生頻度が下がるわけでもない.水温が70度付近まであがっていても突然発生することがある.完全暖機したころに,ストンと症状が治まり,症状はなくなる.
    • 症状Bは症状Aに比べて発生頻度は少ない.特に症状BはECUリセットをすると発生しやすい.
    • アクセルオン時は特段異常なし.あくまでアイドル時のみ.クリープ強くてしんどい.

症状からの分析

症状Aと症状Bと,どちらも引き起こす可能性がある原因として,「過剰な空気流入」があります.
最近のエンジンは,空気の吸い込み力(負圧)と燃焼室内で適正に爆発が起きているかを見ています.そのため,空気が多く入っていくと,その分燃料を増やし,勝手にエンジンの回転数を上げていきます(症状A).
一方で,どの程度スロットルを踏んでいるかなども見ており,スロットルを踏んでもいないのにエンジンの回転数が上がっていくと,強制的に燃料をカット(フューエルカット)し,回転数を落とす仕組みがあります.
この二つが組み合わされることによりハンチングが起きたりします(症状B)

そのため,この手の症状を分析するには下記を見ていくことが大事です.

  • 観点1: 必要以上の空気を吸っている装置やホースに穴がないか?
  • 観点2: エンジンの燃焼に関わるセンサに故障がないか?
観点1

必要以上の空気を吸っている可能性を考えたとき,主に下記を疑います.

  • バキュームホースの穴やスロットルボディとサージタンクの間の継ぎ目などから空気を吸っている(二次エア吸い)
  • アイドルスピード制御バルブ(ISCV; Idle Speed Control Valve)の弁の詰まりや故障により,空気を遮断するように弁が閉じない
  • アイドルアップデバイスの故障により,必要以上に空気が流入する

結論からいえば,アイドルアップデバイスの故障でしたが,普通は疑う順に,二次エア吸い>ISCV>>>|越えられない壁|>>>アイドルアップデバイス,でしょうか.

観点2

エンジンの効率のよい適正な燃焼を実現するセンサー類の故障も考えられます.

  • O2センサの故障
  • バキュームセンサの故障(車種によってはエアフローセンサ)
  • スロットルポジションセンサ
  • エンジン制御用水温センサ
  • 冷却液サーモスタット(3,4年前くらいに交換済み)
  • 吸気温センサの故障
  • 排気温センサの故障
  • エンジン制御装置(いわゆるコンピュータ; ECU; Engine Control Unit)の故障

難しいところですが,アイドル不調に特に関係がありそうなのは,O2センサ,水温センサ,バキュームセンサ,ECUでしょうか.

検査・修理歴

思いつく限りメスをいれた気がします.

ダイアグチェック

平成初期 AE100 カローラはもはや旧車に片足を突っ込んでいる車ですが,独自のダイアグ(診断)システムを持っています.ダイアグシステム(Diagnosis System)とは車のボンネット内(最近の車は運転席にあったりする)のダイアグポートに専用の診断機を装着し,ECU の挙動や異常状態の記録を読み取るというものです.
独自の,と書いたのは,今の車は共通のOBDIIという規格化されたダイアグシステムであるのに対し,この頃は車毎に独立したダイアグシステムを持っているためです.つまり,オレオレ規格.
AE100 カローラのダイアグポートはボンネット助手席寄りにあります.本来はここに専用の診断機を差し込むのですが,そのようなものを持っていない貧乏人どもは運転席メータのエンジンチェックランプの明滅を読み取ることで診断結果を知ることができます.

やり方は簡単で,ダイアグポートのTE1とE1ポートをクリップなどで短絡すると,ダイアグ(診断)モードに移行します.

こんな感じで短絡します.間違えると故障します.

手順

  1. エンジンを停止し,キーを抜く.エアコンもOFFにしておく
  2. ダイアグポートのTE1とE1ポートをクリップなどで短絡
  3. キーを差し込み,ONまで回す(エンジンを始動しない)
  4. エンジンチェックランプの明滅を読み取る

正常であれば,0.52秒間隔で明滅を繰り返しますが,センサの故障などを検知記憶していた場合は明滅のパターンが異なります.

結論:残念ながら,正常パターンしか出ていませんでした.つまり,ダイアグでは原因はわからないわけです.

ISCV清掃 #1 (2013年7月下旬)

ISCVはアイドルスピード制御バルブのことで,アイドル時=つまり,アクセルオフ・スロットル全閉で空気がエンジンに入らない時,最低限の空気をエンジンの送り込むためのバイパス経路を制御している弁です.
車は冷間時には少し多めにエンジンを回して暖機を早めようとします.暖機が完了した後,エンジン回転数を最小限に落ち着けることで燃費の向上を図ります.
ISCVは,この冷間時に空気を多めに流し,暖機後は空気を最小限しか流さないように制御するための弁です.
この仕組みは,ISCVの弁が(1)エンジンの冷却水の温度によって開度が変わるように設計されている,また,(2)ECUからの制御で強制的に弁を開け閉めすることで実現されています.

(1)はISCV内のバイメタルという熱によって膨張したり収縮したりする金属によって実現され,(2)は電磁石により実現されています.イメージからすると,弁の基本開度を(1)で決めて,(2)で細かく制御というかんじ.

私ももちろんISCVの清掃はやりました.
過去のエントリにはありませんでしたが,エアクリーナー部分を取り外し,スロットルを剥き出しにしてエンジンコンディショナーを吹き込む作業です.

手順

  1. エアクリーナーボックス四隅のクリップを外す
  2. プラスドライバーでエアクリーナーボックスとスロットルを繋ぐプラスチックのパイプを止めているバンドを緩める
  3. パイプを引き抜く
  4. エンジンをスタートし,少しスロットルを煽りつつエンジンコンディショナーを吹きかける.特に,スロットル弁の手前真下に開いている穴がISCV行きの経路です.

注意として,あまりに多くエンジンコンディショナーを吹きかけると,ISCVそのものが故障することがあります.具体的にいうと,(2)を実現している電磁石の配線がショートしてしまうことがあるのです.この場合は,ISCVのみならず,ECUごとショート状態になり,破損することがあります.
必要以上に吹きかけないことが肝要です.特に,エンジンコンディショナー液のつけ置き状態になるのは避けたいところです.

作業時間: 30分
結論:効果なし

ISCV清掃 #2(2013年8月6日)

本格的に清掃するために,ISCV を分解して徹底的に清掃することにしました.
スロットルボディごと取り外し,ISCVをカチ割ってエンジンコンディショナーを吹きかける計画です.

id:Hie:20130804#1375612625
id:Hie:20130806#1375797864

作業時間:120分
結論:効果なし

あの手この手(2013年秋〜2014年春)

その他,下記を試しました.細かい話なので,備忘録だけ残します.

  • 吸気温センサ交換
  • エアクリーナーエレメント交換
  • バキュームホース交換

まあダメでした.

ISCV交換(2014年6月1日)

ついに ISCV を交換することにしました.
ISCV はカリーナと共通なので,カリーナのスロットルボディをヤフオクで落札し,中古品交換を試みました.

id:Hie:20140601#1401636276

作業時間:120分
結論:効果なし

ちょっと心が折れそうです.

O2センサ交換 (2014年6月6日)

特に点火プラグが異常に焼けているということもなかったのですが,異常燃焼を起こしている可能性を考え,関連するセンサを交換することにしました.
O2センサです.AE100 カローラでは,O2センサが異常信号を出したときくらいしかダイアグで拾わないため,センサそのものが完全死しているとダイアグにも引っかかりません.
もしかして?とおもって交換です.

といっても新品のO2センサも高いので,BOSCHの汎用品を流用です.詳しくは次リンクを参照していただきたいのですが,AE100カローラで動作するという保証はありません.今でもちゃんと動いているかは知りません.

id:Hie:20140606#1402062090

作業時間:60分
結論:効果なし

もう放っておくかどうかを考え始めた頃です.

エンジン制御用水温センサ交換 (2014年6月28日)

なぜか見落としていたのですが,水温センサを交換していませんでした.
AE100には,メータ用とラジエタファン用とエンジン制御用の3つの水温センサがあります.後者の二つは共用だと勘違いしていましたが,艤装図を読んでいるときに見落としに気づきました.

id:Hie:20140628#1403971694

作業時間:30分
結論:効果なし

もうね.

エンジン制御ユニットOH (2014年7月14日)

ここまではしたくなかったのですが,ECUの基板修理に乗り出しました.
もっとも,壊れているかは見た目ではわからないので,よく故障する電解コンデンサのみを交換です.

アイドル異常案件では,もっとも難易度の高い修理です.
ほんと,ここだけは触りたくなかったのですが….

id:Hie:20140706#1404634184
id:Hie:20140717#1405616299

作業時間:240分
結論:効果なし

全俺が泣いた.

スロットルポジションセンサ交換 (2014年7月21日)

スロットルポジションセンサは,スロットルの開度を測るセンサです.つまり,スロットル全閉のアイドル状態も検出しますので,この情報を基にECUはアイドル時のエンジン制御をします.
ここがおかしくなるとアイドル異常となることも希にあるらしいので交換します.
これまた,カリーナからもらってきたセンサと交換です.
スロットルボディ取り外し必須.

id:Hie:20140721#1405953154

作業時間:60分 (慣れてきた)
結論:効果なし

……….

アイドルアップデバイス交換 (2014年8月16日)

ここまでやってもダメということは,やはり二次エアを見落としているのかと思い,いろんな検査やホースの点検などを繰り返していましたが,あるとき(7月22日 id:Hie:20140722#1406039228),エアコン調整のためのアイドルアップに関する整備記述を見つけました.
アイドルアップとは,エアコンなどの負荷の高い装置を動かすときに,エンジンを少し強く回すための仕組みです.ISCVと似ていて,これも,空気をさらに別の経路から多めにエンジンに流すことで実現されています.このとき,エアコンのON/OFFに合わせて空気流入量を制御している弁がアイドルアップデバイス(アイドルアップマグネットバルブ,アイドルアップVSV)と呼ばれているものです.
この整備記述を読んだときから,気になっていたのですが,エアコンOFF時にはアイドルアップデバイスは動作しないはずで,エアコンOFFでハンチングが起きることもあったため無関係だと思っていました.
しかし,あるとき,エアコンOFFにもかかわらず,ボンネットから「カチ,シュー」という音とともにハンチングが始まったのです.
まさかと思いつつ,プライヤーでアイドルアップデバイスのホースをつまむと,正常になる….あれ,ここなの???ということで交換に踏み切りました.

id:Hie:20140811#1407762581
id:Hie:20140816#1408153571

作業時間:10分
結論:完治

長い道のり

事実上,1年間,アイドル不調に悩まされていましたが,無事解決にたどり着きました.
あんなに色んな部品を集めてきて(たぶん,工具込みでトータル4,5万円),時間をかけて検査・修理してきたのに,問題の部品は1,000円だったし,交換も10分でした.
エンジン周りの異常は難しいということをよく味わった一年です.次は燃料系あたりが故障しそうです.

このトラブルの間に,この車も 10万キロ越え,車齢20年となりましたが,もうちょっと乗り続けるつもり.でも,もうトラブルは勘弁してもらいたいよぉ.