思い出したかのように ATF を交換したときの記録をうpしてみる

このメモは私のいい加減な知識によりプロデュースされました.

ATF交換教信者とアンチ

ATなクルマの場合,ATF(オートマ用のトランスミッションオイル)を交換するかは結構悩みどころです.特に,クルマの走行距離が多く,ATFを全く交換していないとなると,ミッション自体をぶちこわしてとどめを刺してしまうなんてこともあります.
ATF交換については,信者とアンチがおりまして,日々 2ch などで不毛な争い激論を交わしております.

  • 曰く,ATFを交換することで燃費があがった! ⇒ 信者
  • 曰く,ATFだって劣化するんだから,ATを長持ちさせるなら交換すべき! ⇒ 信者
  • 曰く,メーカはATFの交換指定を明示してない!ってことは不要だ! ⇒ アンチ

まあ一つ目は,正直妄想だと私も思うのですが,ATを長持ちさせるためにはATFは交換すべきだと思います.

交換の目安

ATをきれいな状態に保つには,おおよそ20,000kmに一度くらいで交換することが望ましいという意見が多いようですね.そして,無交換50,000kmあたりからディーラや黄色い帽子などで断られるようになり,70,000kmあたりでは交換をしてくれるショップは無くなると聞きます.
多走行車はATF交換でATが壊れる説の論拠ですが,これは,ATFオイルパン(ATFのたまり場)等で固まっているスラッヂ(ミッションが内部で削れて出た削りカス・金属粉)を新油が溶かしてしまい,それがバルブボデーに詰まるというものです.バルブボデーというのは,ATケース内で適正なATF油圧を維持するための精密な装置のことで,こいつが故障⇒ギアチェンジ不能となります.
ニュートラルからドライブやリバースにいれたとき,1秒程度でミッションが繋がるようであれば交換可能とか,ATFの色で判断とか,臭いで判断とか,こちらもいろいろな流派がありますが割愛.まあ,何度かシフト入れ直さないと繋がらないようなのは末期なので,ATF交換だとか以前に,すでに壊れている気が致します.

ATF交換宗派

ATF交換教には様々な宗派があります.

  • ATF交換教 循環交換派
  • ATF交換教 圧送交換派
  • ATF交換教 ドレン交換派

循環交換とは,大半のディーラや黄色い帽子で取っているATFの交換方法です.簡単にいうと,ボンネットにあるATFオイルレベルゲージから吸い取れるだけ古いATFを吸い出して,新ATFを同量注入のうえミッションを回して攪拌,再度吸い出して注入…を繰り返す方法.メリットはお手軽であるということなのですが,原理的に全て新油に置き換えることはできないためオイル代が大変なことになるというデメリットも抱えています.
圧送交換とは,ATFの通り道になっているパイプ(ATFオイルクーラなど)を取り外し,ミッションを回しながら,一方から旧ATFを抜き取りつつ,同量の新油をもう一方に注入していく方法です.全ATFを新油に交換できているかは謎ですが(信者は全量交換と語ります),循環交換よりは効率はよさそうです.しかも,ATFの流れるラインごときれいになるオマケつき.デメリットはそういうATFの通る経路にアクセスできないとダメですし,作業が結構手間ですし,専用の装置が必要.
ドレン交換は,ATFオイルパンドレンボルトを取り外し,オイルパンから全てのATFを捨ててしまう方法です.その後,蓋をしてから新油を注入します.メリットはミッション内に残ってしまった僅かなATFを除いて,本当に全量を交換できることです.
これだけ見ると,ATFの流路まではきれいにならないものの,ドレン交換が圧倒的に手間も少なく,車種にもよるけどATFも循環交換より多量に交換できちゃってウハウハじゃないか…(AE100だと90%くらい新油に入れ替わるくらいだ).どうして循環交換派とか圧送交換派が淘汰されてないの…という疑問がわき上がるかとおもいます.これはスラッヂが与える悪影響(と交換時のミスによるオイル漏れ)が関係しています.他にもあるとおもうけど.例えばATFドレンのないクルマもあると聞きます.

ATF交換教におけるサタンないしアーリマンとの戦い

ATF交換教の最大の敵はスラッヂです.旧油から新油に切り替えたときにオイルパンやミッション・バルブボデーに付着したスラッヂをどう処理するのか.ここでいっている処理とは,スラッヂそのものを除去する,スラッヂを浮き上がらせない(そっとしておく)ということです.新油を入れたとき,スラッヂが浮き上がりバルブボデーを詰まらせることがあるというのは上記に書いたとおりです.
さて,なぜ循環交換派が何だかんだと幅を利かせているのでしょうか.確かに作業はラクそうです.でも,それ以上に,循環交換は新油と旧油の比率を調整できるというメリットがあるのです.つまり,多走行車でスラッヂが多そうだから,少しだけ新油を混ぜてスラッヂを浮き上がらせないようにする,ということができるということです.循環交換派の信者は,こう主張しているし,メカニックにもこれでいいと(本人が思っているかどうかはともかく)言っている*1.でも,個人的には疑問があります.だって,いずれ,また新油を継ぎ足すわけで,スラッヂは徐々に徐々に浮いていくわけです.一発でバルブボデーを壊すかジワジワとなぶり殺しにしてやるかの違いでは….オイルパンにあるスラッヂを引っかけるためのマグネットに集まることを期待しているのかもしれませんが,ちょっと謎の論理だと感じています.
圧送交換は,流路はきれいになりますが,オイルパンにあるスラッヂはほとんど除去できない気がします.なぜ圧送交換派信者が,圧送交換を強くすすめるのかよく分かりません.これはドレン交換でもオイルパン内のスラッヂが抜けたわけではないので同じ事です.しかも,流路はきれいになっていません.

ドレン交換派には,さらに分派があります.ドレン交換清掃派です.ドレン交換清掃派はドレンから旧油を抜いたあと,オイルパンを分解して最もスラッヂがたまっていると思われるオイルパンをブレーキクリーナで洗ってしまうのです.しかも,オイルパンとバルブボデーの間にあるストレーナという漉し器も新品に交換してしまうのです.これにより,残るスラッヂは流路やミッション内だけになります.
オイルパン清掃・ストレーナ交換の上での新ATF注入後に,数十キロ足らずの走行で再度ATFを交換して,流路やミッション内のスラッヂすら取り除いてしまう信者もいます.ドレン交換清掃過激派と言います.過激な中でも右翼・左翼がありまして,右翼は再度オイルパン清掃・ストレーナ交換するのに対して,左翼は清掃やストレーナ交換は行わず,ATFだけ再度入れ替えます.このようにドレン交換清掃だけして,再度のATF交換すらしない信者を,侮蔑を込めてドレン交換清掃ニワカ派と言います*2
ドレン交換清掃過激派の中には,旧油をドレンから抜いた後にATFフラッシング剤を添加した新油で洗浄してから作業を始める分派もいます.これはバーダル神*3をあがめ奉る分派であることからバーダル派と言います.バーダル派は交換後にATF添加剤も入れる傾向にあるようですね!

私は「ATF交換教ドレン交換清掃派」の洗礼を受けてニワカ信者になった

ハイ.ドレン交換清掃ニワカ派になりました.ストレーナまでは交換しますが,オイル代がもったいないので,再入れ替えはしません.

カローラAE100のストレーナ交換はきわめて簡単です.難しい気がするかもしれませんが,なんてことはない作業です.ただオイルまみれになる覚悟だけはしておきましょう.
必要なものは下記の通り.

  • ATF 8Lくらい
  • クルマの下にもぐるための道具(リフトやリジッドラック)
  • オイル受け.計量できるとなおよし.
  • ラチェットなソケットレンチ(たしか,10mmくらいしか使わないです)
  • オイルパン用液体ガスケット(無くてもよいです.ただし,オイルパンを再利用する場合は使うべきかと)
  • 毛羽立ちにくいウエス.ぶっちゃけキッチンペーパーでok.
  • レベルゲージに入るくらいの耐油ホースと,それに接続するじょうご.(あまりにホースが細いとATFの粘度のせいで上手く流れてくれません.ホースは短くてOK.長いと逆に粘度のせいで入りづらい)
  • 部品類(AE100; H6/6の場合)
    • ドレンプラグガスケット(ATM) (35178-30010; '91/06〜'02/06)
      • ドレンボルトに噛ますシールワッシャ
      • 200円しないくらい
    • トランスアクスルオイルパンガスケット(ATM) (35168-12020; '93/05〜'01/12)
      • オイルパンを閉じるときにはめ込むガスケット.コルクでできている.
      • 600円しないくらい
    • バルブボデーオイルストレーナASSY (35330-12020; '93/05〜'02/06)
      • ストレーナです.こいつには,コルクのガスケットが一枚付属しています.
      • 2,500円くらい.
    • オーマチックトランスアクスルオイルパンSUB-ASSY(ATM) (35106-12070; '93/05〜'96/05)
      • オイルパンそのものです.再利用するつもりなら不要ですが,後述の問題もあるので確実にいきたいなら交換すべき.
      • お高くて,4,000円くらい.ひょっとすると,ガスケット含むかも.カタログからはよくわかりません.

作業はちょう簡単です.

  1. 車体を浮かす.
  2. ATFオイルパンのドレンボルトを外してATFを抜いて計量しておく.
    • ATFオイルパンは中央よりやや助手席側
    • レベルゲージも外してATFを抜けやすくしておく.ゴミが入らないようにね.
    • オイルを出し切るために,エンジンをちょっと回したりシフトレバーいじったりする人もいますが,やめた方がいいんじゃないかな….
    • 抜いたオイルの量はちゃんと量っておく.抜けたぶんだけ新ATFを入れるからです.これを忘れるとあとで酷い目にあいます.
  3. ATFオイルパンの周囲のボルトを対角で抜く.
    • 対角で抜かないとオイルパンが自重で曲がっちゃうよ.
    • ボルトが残り二本になったらパンの下に常に手を当てておく.くっついているように見えるけど,自重で落っこちてくる.しかも時間差で….パンは結構重たいので気をつける.
  4. のぞき込んで,銀色の蓋っぽいものがあったら,それがオイルストレーナ.3本のボルトで止まっているだけなので取り外す.
  5. 新オイルストレーナを取り付ける.
    • ガスケットをお忘れ無く.
  6. オイルパンの継ぎ目にコルクの古いガスケットが残ると思うので,これをはぎ取る.
    • たぶん取り外したオイルパン側に張り付いています.
    • これは,滅茶苦茶根気がいります.カッターと金属スクレーパがないとかなりつらい.私は何度も心がへし折れそうになり,へし折れました.つまりちゃんと最後まで剥がさなかった愚か者です.剥がすのがめんどくさい人は,素直にオイルパンの新品を買おう.
    • まず無いと思うけど,万一,コルクが車体側に残ったら…ご愁傷様です.がんばってね!
  7. 使い回しのときは,オイルパンを鬼のようにブレーキクリーナで洗浄.
    • スラッヂ(金属粉)がオイルパンについているマグネットに大量についているので,マグネット毎清掃しちゃう.
    • マグネットはもとあった溝にちゃんと戻すこと.
  8. 車体側の接合面もブレーキクリーナで脱脂.
    • 調子にのってバルブボデーとかに吹きかけないように.
  9. 液体ガスケットをオイルパンのコルクを剥がした面に塗布して,新品のコルクガスケットを貼り付け.
    • 使った液体ガスケットの用法に従いましょう.5分立ってから取り付け,とかいうガスケットも多い.
    • 内側にはみ出ちゃったら拭き取っておく.
  10. オイルパンを接合して対角にボルトを付ける.
    • この作業はATFお漏らしするかどうかの重要なポイントです.
    • 液体ガスケットを使った場合は,最初からボルトをしっかり締めすぎると液体ガスケットが埋めてほしいすき間から逃げてしまう.まずは,人差し指中指で締め付けるくらいのゆる〜いトルクで締め付ける.ぐらい的には3.5N・m*4くらい.相当弱い力.
    • 正直,最初は緩すぎて漏れるくらいでOK.きつくするとコルクがつぶれすぎて逆にすき間ができます.緩すぎて漏れるくらいでよいです.これなら増し締めできますからね.
    • 完全に液体ガスケットが固まったら適正トルク4.9N・m(50kgf・cm)で締め付ける.*5
    • 完全に固まって…というところは使った液体ガスケットの用法を確認.
  11. ドレンワッシャをかましてドレンボルトを締め付ける.
  12. 新ATFを抜いた分だけレベルゲージから継ぎ足す.
    • レベルゲージから耐油ホース+じょうご経由で.
    • 入れすぎたり少なすぎたりするとアウトになるので注意.エンジンオイルとちがって結構シビアです.
    • もしエンジンが暖まっているうちにATFを抜いているなら,↑で計量した古いATFは熱膨張でややかさ増しされています.この場合は,熱膨張を考慮して少し少なめにATFを投入するのが吉.
  13. エンジンを投入して冷間時のATFレベルを計る.COOL時の規定内にオイルがあればOK.FULLギリギリにあるということよりも,規定内にあることが重要.
    • 少ないようなら少しずつ足す.10ccずつくらいで.
    • ATFのレベルを計るには,シフトを各ポジション1秒くらいかけて,順繰りに全パターンを2回くらい回した後,直ちに計測する.エンジンオイルと違って攪拌した状態で調べる.
  14. 問題なければ2,30分走ってきて,レベルゲージで確認.HOTで規定内にあればOK.
  15. 数日走った後で,継ぎ目をウエスで撫でてみる.漏れているようなら,もう少しだけボルトを増し締め.

結構作業量あるように見えますが,コルクガスケットを剥がすのを除けば1時間かかるかどうかですよ.

ギャラリー


ドレンボルトをあけよう

どぼどぼ.ちゃんと計量しようぜ

銀色のやつがストレーナ

きたねえオイルパンだ

ねっちょりとな

AE100あれこれ

ギャラリーのAE100はAE100-AEPEKでして,ミッションはA240Lです.A240L,A240E,A241Lは同じですが,A131L,A132Lだと形状が異なります.まあ,やることは一緒なんですけど,ボルトの数が違います.前者は18本,後者は15本です.
なお,EE101系AT車は全部A132L,131Lのいずれかです.AE100系AT車は,AEPEK(SEリミテッド), AEPNK(クーペS)だけがA240Lで,他は全てA131Lです.AE101系AT車はA240EかA241Lのいずれかです.

純正オイル様万歳!

交換方法にも様々な宗派がありますが,オイルを何にするかも大きな論争があります.とはいうものの,やっぱりメーカが最初に使っていたやつがいいよね,と個人的には思います.私は,ホームセンタを旅して,大昔のトヨタ キヤッスルのデキシロンII(TOYOTA CASTLE AUTO FLUID D-II)を探してきました.AE100-AEPEKの場合(A240Lの場合)ATFは全量で7.2Lですので,4L缶 2本でいけます.今回は6.5L交換できましたので,ほぼ全量交換と言えます.

ぶっちゃけ交換してよくなったのか

7万キロでの初交換でしたが,ぶっちゃけシフトショックがでかくなっただけでした.もっとも正常な範囲ででかくなったという意味です.最初から違和感があったわけではないですしね.
なんでなのかなーとあれこれ考えたのですが,現時点での結論は,ATFがまだなじんでおらず硬い状態であったためと考察してます.ATF交換してからすでに5,000km走りましたが,かなりショックは減ってきました.それと,オイル交換直後,信号待ちでドライブにしたまま停車すると,オルタネータの発電量が異様に落ちる現象がでていました(通常14.4Vなのが,11Vまで落ちた.).これもATFオイルが硬すぎて大きな摩擦が生じており,結果としてオルタネータの発電量が減ってしまったのではないかと思っています.これも今は元に戻っています.

宗派一覧

  • ATF交換教
    • 循環交換派 - レベルゲージでの交換
    • 圧送交換派 - ATF流路での交換
    • ドレン交換派 - ドレンから捨てて交換
      • ドレン交換清掃派(ニワカ派) - オイルパンを清掃しストレーナを交換も交換する.ここで終わればニワカ派.
      • ドレン交換清掃過激派(左翼) - さらに再度新油と入れ替える.ここで終われば左翼.
      • ドレン交換清掃過激派(右翼) - オイルパンの再清掃やストレーナ交換まで行う.
      • バーダル派 - 過激派に含まれ,バーダルのATフラッシング剤や添加剤も利用する.

追記(2011/11/14)

バーダル派にも片足つっこみました.
id:Hie:20111114:1321288732

参考

TOYOTA ATFストレーナー+ATオイルパンガスケット (kazu90さん)
ATF交換作業 −ATFストレーナー&ガスケット交換編 【98498km】− (kazu90さん)
コルサの交換記録です.AE100のA240Lミッションとほとんど同じです.とても参考になりました.ちなみに,kazu90さんは,ATF交換教ドレン交換清掃過激派(左翼)バーダル派です(笑)

*1:もっとも,循環交換派はATF交換教の中ではかなりリベラルで,ほとんど無宗教といって良いレベル.

*2:ドレン交換のうえ内部を清掃しても,流路にはやっぱりスラッヂがありまして,この方法もやっぱりパーフェクトにスラッヂを除去することはできません.はがゆいね.ATの調子が悪くない⇒たぶん流路やミッションにスラッヂは少ない,なので,この状況ならドレン交換+清掃は有効かな,と個人的に思いますけど.

*3:バーダルというATフラッシング剤のメーカがありまして,このバーダルがATフラッシング剤でよく使われています.AFという商品.AFOと書かれていることが多いようです.

*4:30kgf・cm.レンチの柄を先から10cmのところをもって3kgの力で回す.

*5:50kgf・cmってのは,レンチの10cmのところをもって,5kgで締め付けるという意味.指一本で締めるくらいです.